3月25日に消費増税を目指す野田佳彦首相が自民党の谷垣禎一総裁と極秘会談していたことが判明。結局、民主も自民も「増税」しか見えていないようだが、政治家がやるべきことは他にある。経済界の裏事情サイト「闇株新聞」の運営者X氏が「円の国際化」を語った。

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 国の将来を考えるべき国会は、当面空転が続きそうなので、今回は、やや視点を変えて「円の国際化」というテーマについて考えてみたい。「消費増税や財政赤字と何の関係があるの?」と言われると思うが、実は関係が"大あり"なのだ。

「円の国際化」とは何を意味するかというと、世界中で円が決済に使われ、準備通過や預金として保有され、借り入れや国債の発行に使われることを言う。要するに、世界中で日本人以外が円を積極的に「使い」、「保有し」、「借りる」ことをイメージしてほしい。
 では、円を国際化して、何のメリットがあるのか。

 円を国際化しても、確かに財政赤字が減るわけではない。だが、この景気低迷時に消費増税を強行しなくても、日本の景気回復を待つ時間が稼げるのだ。

 今の財務省の主張は、消費増税をしなければ膨らむ一方の国債発行額を国内の資金だけで消化しきれなくなり、日本がギリシャのような債務不履行に陥る、というものだ。もし、円を国際化して今のうちに国債の保有先を海外にも増やしておけば、より多額の国債を消化し続けることができるようになり、財務省の主張する日本の財政破綻は杞憂に終わる。

 これを実践しているのが、通貨の国際化が最も進んでいる基軸通貨国の米国である。米国は発行する国債の約半分が海外で保有されている。米国は金融危機以降、財政赤字が毎年1兆ドル以上あるが、だれも米国がギリシャになるとも思っていないし、発行される米国国債が売れなくなるなどとも心配していない。ドルが基軸通貨として十分に国際化しているからである。日本が狙うべきは、この基軸通貨の一端を円も担うということだ。ドルやユーロへの信認が揺らぎ始めている今が最大のチャンスなのだ。

 今の日本は経常黒字国なので、黙っていると円は海外に流出せず、国内に溜まる一方だ。そこで突破口になるのが、日本国債を海外にどんどん売り込んでいくことである。日本国債の海外保有量が増えれば、自然と海外での日本国債の流通量も増える。すると、その決済に必要な円の流通量も増える。その結果、日本国債の海外保有がさらに増えていくという好循環が生まれるのだ。

※週刊朝日 2012年3月16日号