約1千兆円もの債務残高を抱える日本。野田内閣は2015年までに消費税10%を主張しているが、5%の増税でも歳入は約12兆円の増加のみ。2012年度予算の歳出総額が90.3兆円、不足分は44.2兆円にもなり、増税しても、新たな借金額は32兆円ほどに減額するだけになる。この状況を打開するためには「社会保障費の削減」が必要だとジャーナリスト・田原総一朗氏は指摘する。

*  *  *

 本気で借金を減らそうとするなら、消費税を10%に増税した上、同時に歳出も減らすことを考えるべきではないのか。

 野田内閣は国家公務員の人件費の削減、国会議員の定数削減などを打ち出しており、これは当然やるべきだが、額が小さすぎて実はほとんど歳出削減にならない。はっきりいうと、社会保障費を思い切って削減するしかないのだ。

 だが、社会保障については、野田内閣は強化するとばかりうたっている。年金制度にしても、短時間労働者に対する厚生年金、健康保険の適用拡大などをうたい、「7万円の最低保障年金」を創設するとまで明言している。

 消費増税という国民が嫌がることを敢行するから、そのことを言いたくないのだろうが、隠蔽は時を移さずに露呈する。そのとき、国民の信頼を決定的に失うことになるのではないか。

※週刊朝日 2012年3月9日号

著者プロフィールを見る
田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

田原総一朗の記事一覧はこちら