「悔しいです。何とか点をとりたかった。残念です」

 オランダ戦終了直後のインタビューで岡田監督は絞り出すように言った。落胆の表情は、それだけ本気で勝負を挑んだ証しだ。

 勝ちに行く。試合前の指揮官の言葉に偽りはなかった。組織を固めた。オランダがパスを回してゴールをうかがうと、素早く密集して自由にさせない。初戦でデンマークを2-0で破った優勝候補が、じれてファウルを仕掛けてくる。

 前半0-0。守りきれると確信したのだろう。日本は後半、攻め始めた。パスをつなぐ。ゴールを狙う。後半8分、GK川島の手を砕くようなスナイデルの強烈なシュートで先制点を許すと、岡田監督は、中村俊輔、岡崎、玉田と攻撃の3枚のカードを切っていく。

 最後は闘莉王もゴール前に置いて攻め続けたがゴールは奪えなかった。カメルーン戦に続いて1トップを任された本田は言った。

「攻撃に関しては物足りなかった。相手の脅威になれなかったのは残念」

 ゴールこそ奪えなかったが、本田にはエースとしての自覚が感じられた。

 石川県の星稜高校3年の04年にJ1名古屋の特別指定選手となった本田は、卒業するとプロ契約を結び、07年までの3シーズンでめきめき力をつけた。

 朝日新聞名古屋本社スポーツグループでサッカーを担当していた内海亮記者は、試合で勝っても負けてもきちんと話をする本田に好印象を持っていた。

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