試合中は簡単にシュートができるようなパスがくるのはまれだ。相手に阻まれたり、ひどい体勢で受けたりしたときでも、シュートを決めなければならない。常にそういう意識で練習に取り組んでいれば、試合でも結果が出せる。

 この「意識改革」こそ、本田を変えた"秘密"だった。点を取る意識が高まっていたからこそ、カメルーン戦でも結果が残せたのだ。

 その得点シーン。カメルーン戦の前半39分、本田はゴール前に入ると見せかけて、動き直して外に広がる。そこへ松井大輔(グルノーブル)からのセンタリング。左足で受けたボールが足元へ。最後は左足でゴールにけりこんだ。

 内海記者はこう話す。

「あのシュートが成長の証しですね。かつて彼が言っていた『意識を変える』ということが、はっきりわかりました。どんな状況でも得点を目指す。そういう意識があるから、ああいう状況で落ち着いてシュートを決められたのでしょう」

 W杯前、モスクワから帰国した成田空港で会見した本田は、岡田監督が掲げるW杯ベスト4の目標について問われて、こう話した。

「実現しようとするかどうかが大事。僕自身はベスト4ではなくて、優勝を目指してもいいと思う」

 ビッグマウスと呼ばれることも恐れず、高い目標を口にしてひたすら突き進む本田に対し、欧州の名門クラブが獲得を狙っている、との報道も出始めた。

「ワールドサッカーキング」編集長の前田拓さんは、欧州サッカー界で中田英寿のような成功を収める可能性がある、と評価する。

「世界最高峰のヨーロッパのリーグで活躍するには、自己主張ができてゴールを決められる能力が求められます。二つを兼ね備えて成功を収めた中田英寿と同じ道を、本田も歩み始めていると見ています。VVVフェンロではキャプテンも任され、コミュニケーション能力では日本人としてずば抜けた力を発揮した。ゴールを決められるように自分のプレースタイルも変えてきた。あとは試合で結果を残せるかどうかです。同じようなタイプの選手が、どんどん出てきてほしい」

 中田が98年フランスW杯をきっかけに、イタリアのセリエAで世界的な活躍をみせたように、本田が南アフリカ大会をステップボードにするかもしれない。

 カメルーン戦の本田のゴールで自信を取り戻した日本は、勢いをオランダ戦でも持続した。本田は言った。

「今日はあまりサッカーを楽しめなかった。次は楽しみたい」

 新エースがどんな活躍を見せるか。

週刊朝日