12月の一大イベント・クリスマスも終わり、今年もあと残りわずか。デパ地下やスーパーには正月用の食材が並ぶ時季となりました。
正月の料理といえば、やはり欠かせないのが「お雑煮(ぞうに)」。古くから(もち)は、特別な日に神へ捧げる神聖な食べ物とされ、新年を祝って食するお雑煮は、日本ならではの食文化として全国各地で受け継がれてきました。そこで今回は、郷土色豊かな正月料理・お雑煮にまつわる豆知識を紹介しましょう。

平安時代に始まり、江戸時代に花開いた「お雑煮文化」

正月に餅を食べる習慣は、平安時代に宮中で行われていた「歯固めの儀」に由来するといわれ、武家の宴会でも餅を入れたお雑煮が振る舞われていたといいます。ただ、当時は餅の原料となる米が高価だったため、庶民のお雑煮には餅の代わりにサトイモを入れるのが一般的だったようです。その後、江戸時代になると、庶民の間でも餅を入れたお雑煮が食べられるようになり、北海道と沖縄を除く全国各地で、地域の特色を生かした多様なお雑煮が生まれました。
その当時、北海道はアイヌ民族が暮らす地方、沖縄は食文化の異なる琉球国であったことから、正月にお雑煮を食べるという慣習が広まらなかったようです。今では北海道にも地域に根づいたお雑煮がありますが、それらは明治期以降に本州から移住した人たちが持ち込み、発展していったものと考えられています。一方で、沖縄には現在も郷土的な「お雑煮文化」というものはないそうです。

地方色豊かで個性的な全国各地のお雑煮あれこれ

一般的に、東日本では焼いた角餅を入れた醤油仕立て、関西・四国では茹でた丸餅を入れた味噌仕立て、中国・九州地方では茹でた丸餅を入れた醤油仕立てのお雑煮が多いようです。なかには、ぜんざいのような小豆仕立ての出雲・能登地方のお雑煮、甘いあんころ餅(餡入りの餅)が入った香川のお雑煮、クルミだれに餅をつけて食べる三陸地方の「くるみ雑煮」や、なんと餅自体が入っていない徳島のお雑煮など、かなりの個性派も。
入れる具材も、東北の山菜やキノコ類、新潟の鮭やイクラ、千葉の青海苔、広島の牡蠣、島根のハマグリ、鹿児島のさつま揚げなど、じつに地方色豊かです。また、具材の語呂合わせで、新年の縁起を担ぐ地域も。たとえば、武家文化の強い関東では、「菜鶏 ⇒ 名取り ⇒ 敵に勝って名乗りを上げる」との意を込め、小松菜と鶏肉を入れるようになったとか。一方、京都では「人の頭(トップ)となれるように」との願いを込めて、頭芋(かしらいも)を入れるそうです。

クルミだれを添えた三陸地方の「くるみ雑煮」
クルミだれを添えた三陸地方の「くるみ雑煮」

やっぱり落ち着くのは、食べ慣れた我が家のお雑煮?

日本人にとって神聖な食べ物である餅に、その土地の特産品や食文化を盛り込んだ、郷土色豊かな故郷の味「お雑煮」。ちなみに筆者の実家(関東)では、昔から具材がホウレンソウと鶏肉だけの超シンプルなお雑煮でしたので、子どもの頃は「海の幸・山の幸がいっぱい入った豪華なお雑煮が食べたいなぁ」……と憧れたものです(笑)。
とはいいつつも、結局落ち着くのは「いつものウチのお雑煮」。ときにはいろいろな味を楽しむのも一興ですが、各地方・各家庭で受け継がれてきた故郷のお雑煮は、やはり誰にとっても格別なのではないでしょうか。この機会に、我が家のお雑煮のルーツを探ってみるのも楽しいかもしれませんね。

白みそ仕立ての京風雑煮
白みそ仕立ての京風雑煮