平成29年の春がいよいよ始まりました。4月になり新しい一歩を踏み出した方も多いこととおもいます。今上陛下の退位のご意向から「平成」という年号に今、注目が集まっているのではないでしょうか? 平成生まれは人口のおよそ30%を占めます。今の日本の土台を担っている若者達が平成生まれなのです。新しいと感じていた「平成」ですがもうすぐ30年。どんな時代だったのか、振り返ってみるのも面白そうですよ。

なんといってもインターネットで便利に!

平成に入って一番大きな変化はやはり、コンピュータが小型になったこと、インターネットを世界中の人がどこででも使えるようになったことではないでしょうか。パソコンといえども、大きなモニターにタワー型の本体とキーボード、マウスはケーブルでつながれ、専用の机が必要でした。それが今やノート型かタブレット、そしてスマートフォン。自由に持ち歩いて乗り物の中、歩きながらでも無線でデータ通信サービスを受けられるようになりました。さまざまな商品には専用チップが搭載されて、私たちは知らないうちに快適な機能の恩恵をうけているのです。さらにそれらの情報を収集して解析し、役立てることも可能です。平成が始まった頃には夢だったことがどんどん実現されてきました。「平成」という時代を表す象徴のひとつ、と考えられませんか?

インターネットの力が世界を変えていきました

世界的にもインターネットの力を感じさせることがありました。2010年(平成22)にチュニジアで起きたジャスミン革命です。インターネットを通じてデモの参加を呼びかけたり、動画投稿による支援を訴える、などの行動が民主化運動を一気に広げ、政権打倒を実現しました。これをきっかけに大きな経済格差や高い失業率による不満をもつアラブ諸国で、反政府運動がおこりました。今でも多くの人を難民にしてしまった紛争が続いています。
情報を自由にやり取りできるインターネットは、ひとりの言葉に多くの人を動かす力を与える反面、国家が情報を管理し国民を統制することが難しくなった、という別の面があることもわかりました。
みなさんも毎日インターネットを使っていく中で、便利な面と恐ろしさを感じる面を経験したことがあると思います。インターネットを有益に使っていくためには、人間の知恵と理性が必要だということではないでしょうか。

経済活動は地球規模に! グローバル化が進みましたが・・・

ちょうど平成の始まりだった1989年、ベルリンの壁が崩壊しました。これをきっかけに東西冷戦が終結し、アジアや東欧諸国、南米などの新興国が世界の経済市場に参入してきました。そこに情報通信技術(IT)の発達と物流のインフラが整備されたことで、世界各国の物理的な距離が一気に縮まりました。
アメリカを中心とした自由主義諸国は、このような進歩を利用して経済を拡大させるために、規制を緩和し関税をなくして自由貿易協定をすすめました。人件費の安いアジアや原材料の安い新興国に生産拠点を移すことで、アジアをはじめとした新興国は投資により雇用が生まれ、経済的に豊かになっていきました。
一方生産拠点を海外に移した国々は、コストを減らすことはできましたが、自国労働者の雇用が減り、産業の空洞化という問題もおこりました。日本でも年功序列、終身雇用というこれまでの働き方が大きくかわり、契約社員や派遣社員、パートタイムと働き方が多様になった結果、正規雇用に比べて賃金が低く、長く働くことが難しい非正規雇用者が増えて、労働者の中に格差が生まれました。
グローバル化で新興国は豊かになりましたが、それまで先進国といわれていた国々は、落ち込んだ国内の経済と雇用を促進する必要から、自国中心へと舵を切ることを目指す指導者が選ばれる傾向にあるようです。

地震、津波、原発事故、叫ばれた危機管理!

考えてもみなかった災害や事件にみまわれた平成ですが、23年3月11日に起きた東日本大震災は、マグニチュード9.0の巨大地震でした。東北地方を中心に関東から西にかけて日本の半分以上の広い範囲に被害が及びました。平成7年に起きた阪神・淡路大震災のマグニチュード7.3の約1000倍近いエネルギーを持った観測史上最大の地震でした。
地震によって発生した津波の高さは最大40.5m、太平洋沿岸の町は丸ごと波にのみこまれてすべてが破壊されました。さらに福島第一原子力発電所では、津波による浸水ですべての電源を失い、冷却機能が失われたためメルトダウン(炉心溶融)の状態になり、原子炉の水素爆発が相次いでおこりました。これにより放射性物質が外部に漏れ出す、という深刻な事故を引き起こしました。現在でも自宅に帰れずに、避難生活を送っている地域住民の方がおおぜいいるのです。また広い範囲で農産物、畜産物、水産物、土壌から基準値をこえる放射能が検出され、生産物は出荷停止となったのです。
日本の原発事故の被害をみたドイツなどの海外諸国では、原子力に頼らないエネルギー政策が叫ばれ始めました。しかし国内では原発をどうしていくのか、具体的な見通しは立っていない状態です。
戦後の高度経済成長を経て日本は大きく変わってきました。順調に発展してきた社会も、平成はバブルの崩壊と冷戦体制の終結、事件、災害によって大きく揺らいだ時代といえるようです。日本も世界と共に大きな政治、経済の目標を必要としている時なのかもしれませんね。
参考:『歴史を知ろう 明治から平成』編集委員会 岩崎書店