陽射しも温かく、気持ちのいい季節になりました。
草花が芽吹いて日々の暮らしの風景も様変わりします。春の植物には生き生きとしたエネルギーが満ちあふれているように感じます。この季節、おいしいものはたくさんありますが、今回はそんな旬の食材の中でも山菜を取り上げてみたいと思います。ちょっとした苦みや独特の食感だけでなく、身近な植物が実はおいしい山菜だったり……。
「え、これも食べられるの?」といった驚きも、山菜の楽しみ方かもしれません。

春・春・春! 山菜の楽しみ方の“いろいろ”をご紹介
春・春・春! 山菜の楽しみ方の“いろいろ”をご紹介

キホンのキ。そもそも山菜とは

野山で自生している植物で、しかも食用になるものを山菜といいます。
栽培されているものとは異なり、品種改良などはされていません。そのため苦みやクセがあるものも多く、それがかえっておいしく感じられるということもあります。
とはいえ、最近では一般の野菜と同じように栽培され、スーパーなどで販売されている山菜もあります。
また、それぞれの地域によって生えているものも違いますし、同じ植物でもある地域ではごく一般的に食べられているけれど、ほかの地域に行くと食べないといったこともあります。

苦みやクセを楽しめるのも渋い大人の証?
苦みやクセを楽しめるのも渋い大人の証?

春の定番! 「向上心」「努力」の花言葉をもつ「つくし」

春先に野原や土手など、日当たりのいい場所に生えているのを見かけます。春の季語にもなっているつくしは、筆を立てたような姿から、漢字では「土筆」と書きます。
袴(はかま)と呼ばれる節を取って、胡麻和えや卵とじにしたり、油でいためたりして食べます。
「つくし誰の子、スギナの子」ともいわれますが、つくしが育ってスギナになるわけではありません。胞子茎(ほうしけい)といって、スギナが繁殖するための胞子を出すのがつくしです。
成長が早く、一日で1センチも伸びるそうです。そのため、花言葉では「向上心」「努力」という意味があります。また、つくしが生えた後に、つくしとは色も形も異なるスギナが一面に生息することから、「意外」「驚き」といった言葉もあるようです。
一方、その名前の由来には諸説あります。スギナについて生えるので「付く子」からつくしになったというものや、袴の部分で継いであるから「継く子」という説。さらにその成長の早さからか「突く突くし」からつくしになったという説もあります。いろいろないわれがあるということからも、人々に親しまれていたことがうかがえます。
ちなみに「つくし世代」という言葉もありますが、こちらの「つくし」は「(相手に)尽くす」からきています。山菜のつくしとはまるで関係がありません。

春といえばつくし、つくしといえば春!
春といえばつくし、つくしといえば春!

あく抜きをしないと危険? ワラビ

春を代表する山菜のひとつ、ワラビはシダの仲間です。
日当たりのよい山肌などに生えています。
葉が開く前、まだ葉がくるりと小さく丸まっている若芽を食用にします。ぬめりや歯ごたえがあります。
アクが強く、また牛や馬などが食べると中毒を起こす、発がん性物質を含んでいると言われますが、きちんとあく抜きをすれば問題ないようです。おひたしやてんぷらなど、いろいろな料理が楽しめます。
また、地下茎からはワラビ粉が採れます。わらびは本来、このワラビ粉から作られます。弾力があり、加熱によって濃い茶色になるのが特徴です。ただワラビ粉を取るのは困難な作業のため、昔から貴重な食材とされてきました。

定番の和菓子もそのルーツは山菜にあった?
定番の和菓子もそのルーツは山菜にあった?

食べるだけでなく布の材料にも! ぜんまい

「の」という字を書いているような渦巻き状のぜんまいは、春の新芽をいただきます。
あく抜きをして食べることもありますが、ゆでた後に乾燥させて保存しておき、食べるときに水で戻して料理に使います。その乾燥方法も天日干しにする「赤干し」と、燻製のようにする「青干し」とがあります。
また、ぜんまいには「男ぜんまい」と「女ぜんまい」があって、採るのは「女ぜんまい」だけ、といわれています。「男ぜんまい」は胞子を出す「胞子葉」のことで、これを採ってしまうとぜんまいが増えないから、また栄養葉である「女ぜんまい」より硬いから……といった理由があるようです。
そのほか、ぜんまいの新芽に生えている綿毛は昔、木綿布があまり手に入らなかった時代には、織物にも使われていました。真綿などに混ぜて糸を紡ぎ、その糸を綿糸または絹糸と合わせて織られた布は、保温性にも優れていたとか?
食べるだけでなく、いろんな活用のしかたがあるのですね。

食べるだけでなく布にも?
食べるだけでなく布にも?