七十二候≪菊花開~きくのはな ひらく~≫食して美味、鑑賞して美麗、菊の花 〈tenki.jp〉|AERA dot. (アエラドット)

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七十二候≪菊花開~きくのはな ひらく~≫食して美味、鑑賞して美麗、菊の花

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早くも10月中旬を迎え、暦変わって≪菊花開~きくのはな ひらく~≫のころとなりました。「菊」は、桜と並ぶ日本の国花。通年いつでも見かけますが、花の季節はやはり秋。高貴な花、霊力を持った花としていにしえより愛され、栽培が続けられてきました。花びらを食せば美味、花の姿を鑑賞すれば美麗。ごく身近にありながらも、実は奥深い「菊」の美を、駆けゆくように去る秋のひととき、五感で感じてみましょうか。

「菊晴れ」の空のもと、いにしえより霊験あらたかとされた菊の花が開きます

時さかのぼって奈良時代から平安時代初期に、中国から到来したといわれる「菊」。以来、日本の風土に溶け込み、独自の品種改良が行われることで、今では中国よりも多彩な品種が創られ、さまざまな姿の「菊」が生まれています。
「菊」は春の桜と並び、日本を代表する花。
いにしえより日本では、菊は花の中で最も品格あるものとされ「百花の王」と称賛されてきました。伝来の当初は鑑賞用としてではなく、邪気をはらう不老長寿の薬として伝わったようです。
平安のころから宮中では菊花の宴(重陽の節句/旧暦9月9日)が開かれ、菊酒の盃を交わす華やかな行事が行われていました。前夜に真綿を菊の花にかぶせ、夜気におりた露と香りをしみこませた「菊の被綿(きせわた)」で身体を拭い、女官たちが若返りを願った習わしも実に雅な趣です。
能の「菊慈童」もまた、菊の霊験により不老不死となった美少年のものがたり。菊に埋もれる庵のなかで700歳となりながらも、永遠に美しい少年が、深山の精霊のように華麗に舞うといった神秘的な曲目です。
また、菊の花が咲くころの秋空が晴れ渡ることを「菊晴れ」というとか。清々しく青く広がる空の下、すっとさわやかな空気を深呼吸すれば、なんだか全身にいい気が満ちて、命ものびそうな気がしますね。

一度は食したい「もってのほか」と呼ばれる食用菊。菊のお茶は眼精疲労にも◎

そんな霊験や薬効さえも感じさせる菊の香り。
菊の花びらをお風呂に入れたり、枕元に置いたりして、その清涼で高貴な香りに包まれてみる。そんな愉しみも、食用の菊花が出回るこの季節ならではです。
そう、「菊」は古くから人々の暮らしに溶け込む和のエディブルフラワー。この秋はぜひ上品な香りとほろにがさを持った菊の花の料理を食卓にのせてみてはいかがでしょうか。
くるみ和えや梅肉和えなどの和えもの、春菊やベビーリーフなどと一緒にドレッシングで和えたサラダなど、生でも茹でても、この季節ならではの味わいが楽しめます。
食用に売られている品種では、黄色く比較的柔らかな食感の菊をよく見かけると思いますが、淡い紫色の菊「もってのほか」のことはご存じでしょうか。
幸田露伴が「菊 食物としての」という随筆の中で
《秋田の佐々木氏から得た臙脂色の菊の管状弁の長さ六寸に余って肉の厚いものなどは、実に美観でもあり美味でもあった。》
と記しているのですが、これはおそらく「もってのほか」のこと。花びらが筒状なため茹でても残るしゃきしゃきとした歯ごたえと、甘さとほろ苦さを併せ持つ美味しさで人気の東北産の高級品です。
山形あたりの言い伝えでは、一軒の農家で休んだ殿様が出された菊びたしを食し「これはうまい、百姓にはもってのほかであるぞ」と言ったとか、言わなかったとか。ユニークな名の由来はほかにも諸説ありますが、正式名は「延命楽(えんめいらく)」。同じ品種が新潟地方では「カキノモト」、「オモイノホカ」と呼ばれてもいるそうです。
カモミールにもどこか似た菊花のお茶は、眼精疲労や頭痛などによいといわれています。ほのかな苦みがあるので、プーアール茶などとブレンドして飲むのもおすすめ。生薬としては解熱や解毒、消炎、血圧降下、抗菌などの作用があり、菊は古くから人を癒してきたのです。

全国で続々開催される「菊花展」での「菊見(菊のお花見)」もまた秋の風物詩

仏様にお供えする白菊、コロンと丸くて可愛いピンポンマム、スプレー咲きの小菊など、和洋の品種を合わせると実に多彩な菊。そんな変幻自在な菊を育てる「菊作り」は、江戸時代や明治時代にたびたび流行し、鉢植えや花壇の菊を鑑賞する「菊見」も、人々にとって心躍る秋の行楽の一つだったようです。
日本ならではの細密かつ技巧的な芸術美へと進化した菊を鑑賞する愉しみは現代にも受け継がれ、10月半ばから11月にかけて「菊花展」「菊まつり」など様々な催しが全国各地で開催されています。
東京だけでも、湯島天神の「湯島天神菊まつり」(11/1~23)、新宿御苑の「皇室ゆかりの新宿御苑菊花壇展」(11/1~15)ほか日比谷公園、浅草寺、神代植物公園など多数。
北海道から九州までの広範囲、秋の風物詩として親しまれる催しに、今年も丹精込めた芸術作品が揃うのも圧巻です。
ぜひ近隣の公園や神社仏閣、お城などで菊の展覧会を見かけたら、ぜひ足を運んでみてください。あでやかな菊人形や懸崖(けんがい)作り花壇、
手鞠のような大輪咲きの大菊の厚物、厚走り、
狂い咲きする江戸菊をはじめとする嵯峨菊、伊勢菊、丁子菊、肥後菊など伝統の古典菊…
驚くほど華麗で見事な菊の競演を愛でに「菊見」へ出掛けるのも、心穏やかで美しい秋の一日となることでしょう。

※参考&出典
植物ことわざ事典(東京堂出版)
年中行事読本(創元社)


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