いつのまにやら秋も深まり、吹く風に肌寒ささえ感じるようになりました。
十月八日、二十四節気「寒露(かんろ)」を迎え、季節は「晩秋(ばんしゅう)」に入ります。いよいよ、秋も終盤です。
七十二候は、初候「鴻雁来(こうがんきたる)」(8~13日)、次候「菊花開(きくかひらく)」(14~18日)、末候「蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)」(19~23日)です。

朝霧の蕎麦畑
朝霧の蕎麦畑

冷え込みにより露は霧となる

二十四節気「寒露」とは、気温が低くなり、野山の草花におちる露にも寒さを感じるようになることを言います。すごしやすい季節はあっという間…北から寒さが表れはじめます。
少し前まで青かった山が色づき始め、朝晩の冷え込みで地表や水面では水蒸気が凝結し、細かな水滴となり大気中を漂う「霧(きり)」となります。
春の霞(かすみ)と同じ現象ですが、平安時代以降、春は「霞(かすみ)」秋は「霧(きり)」と呼び分けるようになりました。季語では、時間帯により「朝霧」「夕霧」「夜霧」、場所により「山霧」「川霧」と、その情景が目に浮かぶような言葉に、先人の季節への愛を感じます。

渡り鳥「雁(かり)」がやって来る

この頃に戻ってくる渡り鳥に「雁(かり)」があります。七十二候の初候「鴻雁来る(こうがんきたる)」とはまさにこのことです。
雁は、十月の声を聞くころにやって来て湖畔に群生しているのですが、カギ状やサオ状になって飛ぶことから「雁の列(つら)」「雁の棹(さお)」「雁行(がんこう)」、昼間に飛び、夜間は水上に降りてくる様子を「落雁(らくがん)」と、季語も多くあります。
多くの俳人が好んで詠んでいましたが、中でも小林一茶の句に『けふからは日本の雁ぞ楽に寝よ』という、こちらまでほっこりする作品があります。次の春までゆっくり羽を休めてほしいな、という一茶の心が伝わってきますね。

夕焼けの雁行
夕焼けの雁行

愛でて、味わいたい秋の味覚「新蕎麦」

味覚の秋。次から次へと美味しいものが収穫されています。
この時期には栗や林檎が店頭に並び始め、新蕎麦や新米も食べごろとなりますね。新蕎麦は別名「走り蕎麦」とも言います。初物に目がない江戸っ子から全国へ広まったと言われています。今でも、観光がてら蕎麦どころに足を運ぶ方も多いのではないでしょうか?
収穫前の蕎麦畑が朝霧に包まれる様子もまた、季節限定の美しさですね。
日本の味覚は、目でも楽しむと言います。少し意味が違いますが、風景としての味覚も味わいたいものです。
この週末は連休の方も多いかと思います。天候を確認して予定を立てて見てはいかがでしょうか?(リンク参照)

《参考文献》
俳句歳時記「秋」 角川ソフィア文庫
日々の歳時記 PHP文庫