東京都内でも東京タワーや向島百花園などで観月の催しが行われますから、近隣のイベントをチェックして出掛けるのも一興ですね。

 なかでもユニークなのが、鹿児島県の南、知覧町などに残る「そらよい」という十五夜行事。ワラの三角帽子を被った少年たちが、「そらよい、そらよい」とさけび、大地の恵みに感謝を捧げます。さらに、すもうや綱引きを行い、月夜の晩を賑やかに楽しく過ごすのだそうです。

●明日28日の満月は、月の姿が今年最大に。来月10月25日の十三夜のお月見もお忘れなく

 そして明日28日は、本年最大の満月が見られるスーパームーン。今日から明日にかけて2夜連続で美しい月を望むことができるのは、何とも贅沢ですね。

「中秋の名月」「満月」「スーパームーン」などと聞くと、なぜか心がざわめき、どうしてもその姿を見たくなるのはなぜでしょう。私たちは月の幻影に魅せられ、降り注ぐ銀色の光の魔力にかかってしまうのでしょうか。

 思い起こされるのは、月に目が吸寄せられ忽然と月見をする日本人の姿に、居合わせたスイス人が驚いたという情景が描かれている、小林秀雄の「お月見」という随筆。

「日本人同士でなければ、容易に通じ難い、自然の感じ方のニュアンスは、在来の日本の文化の姿に、注意すればどこにでも感じられる。」
「お月見の晩に伝統的な月の感じ方が、何処からともなく、ひょいと顔を出す。取るに足らぬことではない、私たちが確実に身体でつかんでいる文化とはそういうものだ。」
(考えるヒント「お月見」より引用)

 いにしえびとが歌に詠み、管弦を奏で、豊作の感謝を捧げ、愛でてきた月への憧憬は、私たち日本人の魂に生まれながらにして備わっている感受性ゆえのものなのかもしれません。
さて今宵の名月、明日のスーパームーン。あなたはどこで、誰と愛でるのでしょうか。

 雲に遮られることなく、冴え渡る月光があまねく広がるすすきの平原、あるいは漆黒の海面にまぼろしのような銀色の月の道が現れるす大海原など、自然の中にたたずみ心ゆくまで眺め愉しんでみたいものですね。

 けれども、たとえ都会のビルの合間からでも、雲の隙間からでも、独りふと夜空を見上げたときに垣間見える月の姿も十分ドラマチック。きっと、しばし我を忘れて、神々しさすら感じさせる月の魅力に惹きつけられることでしょう。

 最後に少々。できれば「片見月(かたみつき)」にならぬよう、後の月「十三夜」(今年は10月25日です)の夜も、空をあおぎ見るのをお忘れなく。十五夜と十三夜、両方の月を眺めたほうが縁起がいいとされているようですから。

※参考&出典
暦入門 暦のすべて(渡邊敏夫/雄山閣)
学習に役立つわたしたちの年中行事9月(芳賀日出男/クレオ)