まずお供えとして準備すべきなのは、なんといっても月見団子です。白く丸い団子は満月にちなんだものともいわれ、神様の食べ物を思わせます。上新粉をよく練って、まるめて蒸して、手作りしてもいいですね。その数は15個が一般的で、形よくピラミッド状に器に盛ります。(一部地方では、団子を平たくして真ん中を指でへこませたヘソモチのほか、関西などでは、頭をとがらせ里芋に似せた団子の場合もあります)。

 お団子に加え、すすき(尾花)、桔梗、葛、女郎花、撫子、萩、藤袴など秋の七草。さらに、里芋(衣被/きぬかつぎ)、枝豆、ぶどうや柿など秋の収穫物も添えて、お月さまをお迎えしましょう。

 また、水を張った盥(たらい)などを用意し、水面に月を映す地方もあります。揺らめく水に映る月を見れば、お月さまがわが家へ来たような気分に。お供えの里芋などを肴に、日本酒を満たした盃に月を映して飲む月見酒も風流ですね。

 ちなみにお月見のお供えものは盗み食いOK。近所の子どもがこっそりお団子を取っても、お月様が食べてくれたとされるので、むしろ歓迎されているとか。今ではなかなかできない大らかな風習は、明るい月夜ならではの解放感から生まれたものでしょうか。

●鹿児島県南の「そらよい」の綱引きなど、全国各地で繰り広げられるお月見の情景

 月見の名所として名高い京都の大覚寺では、大沢池に船を浮かべる観月の夕べが行われます。

 龍頭船、鷁首船が池に浮び、お茶席が設けられ、琴の音色が流れる優雅なひとときは、平安の王朝絵巻さながら。

 また、奈良の采女神社の猿渡池でも船に乗って月見をする采女祭が。ほかにも伊勢神宮・外宮のまがたまの池をはじめ松島、兼六園、姫路城、首里城など全国各地の寺社や城、名園、名所で今宵は月を愛でる鑑賞会が行われるのです。

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