貼るカイロ・ホットカーペット・ヒーター・湯たんぽ・・・あったかグッズで温めている箇所が、いつのまにか赤いアザになっていたことはありませんか? 痛みもヒリヒリする程度で、高温の火傷より軽くてすぐ治りそうな『低温やけど』ですが、じつは見た目より重症かもしれません。

「心地よい暖かさ」なのに?

暖かいものが長時間皮膚に当たることで起こる『低温やけど』は、冬の火傷の半数近くを占めるといわれています。その原因は、
・室内や乗り物等のヒーター噴き出し口の温風で。
・保温式の便座で。
・ノートパソコンを膝の上で作業中。
・睡眠時の電気あんかや湯たんぽ、電気毛布を使用中。
・ホットカーペットの上で熟睡してしまった。
・サウナや岩盤浴で寝てしまった。
・携帯電話を耳に当てたまま寝てしまった。
こんな普通のことで?と驚いてしまうような内容ですよね。
火傷は、44度で約4〜10時間、50度で約3分間、60度なら5秒くらい肌に接触しただけで発症してしまうそうです。「寝てしまった」という原因にパソコン作業や便座使用中(読書や居眠りで?)も含めると、どうやら長時間同じ体勢で熱源に触れ続けることが原因になるようです。
不注意で高温の物に触れたら、「熱っ!」と思わず体を引っ込めますよね。そのおかげで皮膚の表面の火傷ですむのですが、心地よく暖かい物だと、火傷しているという自覚が全くないまま長時間触れ続けてしまいます。気づいたときには「中までじっくり焼けている」状態になり、皮膚の深いところまでダメージを受けてしまうのです。火傷は、皮膚やその下の組織のタンパク質が破壊されて起こり、その損傷の面積や深さで重症度が決まります。とくに 体の小さい子供は広い面積を火傷すると危険です。『低温やけど』は、高温の火傷より深いため重症化しやすく、治るのにも時間がかかります。

『低温やけど』しやすい人とは

熱は血流によって拡散されるので、血行が妨げられると一カ所に熱が溜まってしまうのです。長時間同じ体勢で熱に当たらないようにすることが大切ですが、自分ではその状態に気づきにくい人もいます。
・酔った人
・疲れている人
・薬を服用した人
・運動障害がある人
・糖尿病の人
・高齢者
・乳幼児
お酒や薬で感覚が麻痺していたり、神経や皮膚感覚が鈍くなっていると、長時間熱さに気づきにくくなります。また、皮膚が薄い・乾燥している状態だと重症化しやすくなります。かかと・くるぶし・すねなど皮膚の下にすぐ骨がある部位は、毛細血管が圧迫され熱がこもりやすいそうです。
自分では注意しにくい人に対しては、家族など周りの人が注意する必要があります。長時間暖房器具が同じ箇所に当たらないように動かしたり、長時間サウナやこたつに入っているときは声をかけるなどしてあげましょう。ホットカーペットの上で熟睡している家族に「疲れてるんだな」と毛布をかけてそっと寝かせておいたところ、熱がこもって体の接触部分が重度の『低温やけど』になってしまい、皮膚移植をした例もあるそうです。起こすかスイッチを切ってあげるのが愛情なのですね。就寝時は必ず電源をオフにし、湯たんぽやあんかも布団が温まったら寝る前に取り出すのが基本。どうしても入れておきたい場合は、寝ている間に体が触れないようタオル等でしっかりくるんでおきましょう。

ちょっとした心がけで防げます

『低温やけど』は、なってしまったら皮膚の表面を冷やすだけでは治りません。痛みや赤みがすぐ消えない等、少しでも違和感があるときは早めに皮膚科を受診しましょう。放っておくと時間経過とともに深部にまで損傷が達し、何日も経ってから痛みだしたり皮膚が壊死したりするからです。
・カイロや湯たんぽ等、暖かい物を直接肌につけない。ホットカーペットにも一枚はさんで座る。
・体の一部に暖かい物や風が当たり続けないようにする。
・こたつやホットカーペットの上で眠らない。
・高齢者や乳幼児の布団に湯たんぽ等を入れたまま寝かせない。
このようなちょっとした心がけで未然に防ぐことができます。
暖房器具以外でも電化製品の多くは熱を持っています。また靴下用の使い捨てカイロは密閉された靴の中での使用を想定しているため、貼ったまま靴を脱いでいると一気に高温になってしまうことも。使用説明の注意書きは必ず読むようにしましょう。
体を温めることは冬の病気予防にも欠かせません。安全で快適にあったかグッズを利用して、元気に過ごしたいですね。