米国/英国ソロ・ツアーの模様を収録した最新ライヴ盤MCも興味深い
米国/英国ソロ・ツアーの模様を収録した最新ライヴ盤
MCも興味深い
やはりはずせません『クリムゾン・キングの宮殿』
やはりはずせません
『クリムゾン・キングの宮殿』
『恐怖の頭脳改革』拙文中には取り上げなかったが、ライヴで演奏されそう
『恐怖の頭脳改革』
拙文中には取り上げなかったが、ライヴで演奏されそう

 わたしはよく本屋に行く。本屋が好きだからだ。書店という呼び方より、本屋という響きが好きだ。本屋に行くと、まず、音楽関連のコーナーに行く。音楽雑誌や書籍を読むのが好きだからだ。次に、オーディオ関連、映画関連、写真関連と続く。一時、ビジネス書が好きになって読みまくったが、最近は、少し落ちついてきた。ネットやパソコン関連の冊子も読むが、電子書籍やタブレット熱が、自分の中で、少し落ちついてきたので、これも沈静化してきた。
 文学関連は、目が大人になってきたためか、じっくり読めない。雑文集を手に取る程度になってしまった。
 そんな中、店先で気になるのが、ミュージシャン関連の自伝・伝記の多さだ。

 こどもの頃、偉人伝を読みなさいといわれた。よくわからないまま、母が買ってきた偉人伝を読んだ。
 どういう意図で選んだのか、今でもよくわからないのだが、母が買ってきた伝記は、モーツァルトとノーベルだった。
 小学校低学年だったわたしは、とても長い名前をもつ天才音楽家の旅から旅への生涯を読み、自分は音楽的才能において、モーツァルトに劣ることを思い知らされた。作曲を試みたが、こどものわたしでも、その才能のなさがわかった。あたりまえだが(笑)。
 貧しい生まれだったノーベルは、ダイナマイトを発明し、莫大な富を築くが、一度に多くの人類を滅ぼす武器になってしまったことを思い、ノーベル賞を創設する。
 今にして思うと、こどものころに、どんな人の伝記を読んだかというのは、その後の人生に思いの外、影響を与えるような気がする。
 もし、これが、豊臣秀吉だったり、ベートーヴェンだったり、野口英世だったら、わたしの人生も変わっているような気がする。
 これは、大げさかもしれないが、こどものころの読書体験は、やはり、人生においてとても強いような気がするのだ。
 そういえば、社会人になってからだが、ある図書館の入り口に少年少女のための偉人伝コーナーが設置されていた。そのなかの一冊に、ジョン・レノンと題された本があったことにとても驚いた記憶がある。ジョン・レノンは大好きだが、偉人伝になるとは思っていなかったのだ。
 ロック・ミュージシャンも偉人の仲間入りの時代が来たのだと、認識した。

 さて、ミュージシャンの伝記、あるいは、自伝が気になってしょうがない。
 「キャロル・キング自伝」「シンディー・ローパー自伝」「ボブ・ディラン自伝」「エリック・クラプトン自伝」「ニール・ヤング自伝」「ジミー・ペイジ自伝」あるいは、「パティ・ボイド自伝」(元ジョージ・ハリスンの奥さん、次に、エリック・クラプトンの奥さん)「ミック・ジャガー ワイルド・ライフ」などなど、興味は尽きない。
 それらの中でも一番気に入っているのは、「ジョン・レノン・レターズ」。ジョンの直筆の手紙の画像付きの書簡集だ。こども時代からビートルズ絶頂期のインドからの手紙、解散の時期にポールに送った手紙。父との再会後の父あての手紙などだ。現在だったら、メールになってしまって、直筆の手紙のコピー付きの書簡集なんて考えられなくたってしまった。

 さて、今回の本題。「キース・エマーソン自伝」を読んでいる。このなかのグレッグ・レイクとの出会いのくだりだ。

 グレッグ・レイクは、1947年生まれ。69年リリースのキング・クリムゾン『クリムゾン・キングの宮殿』でベースとボーカルを担当。わたしは、このレコードの最初の曲《21世紀のスキッツォイド・マン》で出会った。当時のタイトルは、《21世紀の精神異常者》だった。そんなタイトルの醸し出す異様な雰囲気や、ジャケットのインパクトも手伝って、他とは異なる強い印象をわたしに与えた。
 そして、次にわたしの前に現れたのは、71年エマーソン・レイク&パーマー(以下、ELP)の『タルカス』だった。
 2012年のNHKの大河ドラマ『平清盛』でオーケストラ版が使用され、話題をよんだので、そのメロディを聴いたことがある人も多いと思う。ELPは、次に、ムソグルスキーの原曲をもとにした『展覧会の絵』を発表。日本でも、大ヒットした。

 これらロック史に残る傑作で作詞・作曲、演奏、そして、ボーカルを担当しているのが、グレッグ・レイクだ。

 72年7月に来日し、22日に雨の中、後楽園球場でライヴが行われ、テレビ放送されだが、その時、当家を訪れていた親戚のおばさんのおしゃべりがうるさくて、集中できなかったことを覚えている。

 「キース・エマーソン自伝」の中で、グレッグ・レイクの初印象やELPまでのメンバー集めの過程。ジミ・ヘンドリクス加入の話があったこと、そうなったら、ELPではなくHELPになっていたかもしれない、などなど。メンバーやその周囲とのいざこざ。両親や結婚の話。ツアー中の女の子たちとの交流。

 20代から30代の若者が、音楽とビジネスの狭間で生きてきた記録。

 年齢は、少し違うけれど、わたしも同じ空気を吸っていたのだと再認識する。

 ミュージシャンたちの伝記や自伝が、偉人伝とは違うかもしれないけれど、やはりとても興味深く、そして愛してやまない記録なのだと思う。

 あれからグレッグ・レイクは、ずいぶん大きくなった。あ、体型のことです。
 グレッグ・レイクのあの声を、生で聴きに行きたい。[次回6/5(水)更新予定]

■公演情報は、こちら
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