ファースト・ナイト・アット・フィルモア・イースト
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マイルス「フィルモア」初登場ライヴ&プロモ・シングル・ヴァージョン
The First Night At Fillmore East (Hannibal)

 またまたハンニバル・レコードがやってくれた。マイルスの「フィルモア」初登場にあたる70年3月6日のライヴが過去最高クオリティ及び半永遠的決定盤として新装登場したのです。もちろん、この日のライヴは全国マイルス者にはおなじみ、かつこれまでも高音質で入手可能だったが、今回はまさしく音質、バランスともに決定版、しかも後述する2曲の「フィルモア」関係プロモ・シングル・ヴァージョンまで追加収録されている。これは新年早々、縁起がいいではありませんか。

 とはいえいきなり出鼻をくじくようですが、今回もセカンド・セットで演奏された《アイ・フォール・イン・ラヴ・トゥー・イージリー》や《サンクチュアリ》のパートは収録されていません。これはおそらくはマスターテープから削除されてしまったのでしょう。原因は録音事故と思われます。ただしこのパートはごくごく短いものなので、まったく気になりません。さてちょっと整理しておくと、マイルスの東西「フィルモア」出演は、それぞれ下記のようになります。

 [Fillmore East : New York]
  March 6, 1970
  March 7, 1970
  June 17, 1970
  June 18, 1970
  June 19, 1970
  June 20, 1970

 [Fillmore West : San Francisco]
  April 9, 1970
  April 10, 1970
  April 11, 1970
  April 12, 1970
  October 15, 1970
  October 16, 1970
  October 17, 1970
  October 18, 1970
  May 7, 1971

 つまりは1970年が、マイルスにとっての「フィルモア」の季節ということになります。最後に1回だけ71年が入っていますが、まあオマケのようなものでしょう。そして今回ご紹介する新着CDが、その第1回出演を収録したもの。視点を変えれば、ウエイン・ショーター最後のマイルス・バンドということにもなります。後任は、ご存知スティーヴ・グロスマンです。なお翌日8日は、あと出しジャンケンというかたちで公式発売されていますね。ただし今回のハンニバルは24ビット・デジタル・リマスタリング。ぼくの耳には、公式盤よりハンニバル盤のほうが勝っているように聞こえましたが、みなさんはいかがでしょう。

 内容に関してはいうまでもないでしょう。そこで今回の目玉は、最後に追加収録されたプロモ・シングル・ヴァージョンになります。もちろん初CD化、しかもこのCDでしか聴くことができません。これは同年6月にライヴ・レコーディングされたオリジナル・アルバム『マイルス・デイヴィス・アット・フィルモア』の発売時に主にラジオ局に配られた宣伝用7インチ・シングル。同アルバムから《フライデイ・マイルス》と《サタデイ・マイルス》が収録されています。編集はテオ・マセロ。テオがどのパートを抽出したか、どこを「売り」だと考えていたか。そのようなことを想像しながら聴く楽しみは何物にも代えがたいと思うわけであります。ともあれ必聴必携の「フィルモア」ライヴとだけ言い添えておきます。それではまた。

【収録曲一覧】
1 Directions
2 Miles Runs The Voodoo Down
3 I Fall In Love Too Easily
4 Sanctuary
5 It's About That Time-The Theme
6 Directions
7 Miles Runs The Voodoo Down
8 It's About That Time-The Theme
9 Friday Miles (single version)
10 Saturday Miles (single version)
(2 cd)

Miles Davis (tp) Wayne Shorter (ts, ss) Chick Corea (elp) Dave Holland (b, elb) Jack DeJohnette (ds) Airto Moreira (per)

1970/3/6 (New York)