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 幼少の頃からクラシック・ピアノを始めて才能を認められたキースは、バークリー音楽院で学び、ピアノ・トリオの活動を開始。'65年、ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズやチャールス・ロイドのカルテットに、'70年にマイルス・デイビスのグループに参加。(チック・コリアやハービー・ハンコックと同時期に在籍したこともあったんですって)

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 '72年頃からヨーロッパを中心にソロ活動、ECMのマンフレッド・アイヒャーと知り合って以降は、ほとんどの作品をECMレーベルからリリース。'80年代にジャック・ディジョネット(ds)、ゲイリー・ピーコック(b)と結成したスタンダーズ・トリオは最長のジャズ・トリオとして活動中。公式HPに世界最長結成25周年(2008年)とありますけど。ブレイキーのジャズメッセンジャーズや中断の時期を差し引いたMJQにまだ負けてると思いますけど、世界最小・最軽量(当社比)みたいなもんでしょうか?ジャズ・トリオとしては、と言うことですね。

 さてWikipediaに「アメリカのジャズ/クラシック・ピアニスト」とある通り、キースのピアノはジャンルを超えて多彩です。ジャズに限っても、その音色は時に暗~く、重~く、深~い……かと思うと、時にものすごく激しく、そしてとてつもなく美しかったりして。

 そんな訳で、ぼくはキース・ジャレットが分かりません(決してキライじゃないですよ。)と最初に言ってしまいましょ。ソロやトリオや、オーケストラをバックにしたコンサートもありました。何度もライヴの撮影させていただきました。でもですよ、その撮影のほとんどが“金魚鉢”の中からでした。コンサート・ホールのステージから一番遠いあたりの上階に、スポットライト照射や、音響のコントロールをしたり、巨大な映写機があったりする設備があるんですね。ライヴを撮影するカメラマンは、本番中そんな所に閉じこめられてしまいます。クラシックの世界では当たり前に(そんな所がガラス張りの部屋だから“金魚鉢”)。

 余談ですが、そんなところのガラスは、映写室の場合は高純度の光学ガラスで出来ているので、そこから撮る写真画質の犠牲は最小限で済みます。ところが質の悪いガラスで出来た“金魚鉢”からの写真は最悪。解像度の悪いぼやけた写真になって、ひどい時には被写体が歪んで写ってしまいます。(キースの場合、高純度光学ガラスでも、演奏中の表情は歪んで写ります。ガレスピーの場合はホッペが膨らんで写ります。)

 ジャズ・コンサートの場合、それがたとえトリオでもソロでも、“金魚鉢監禁”はあまりありません。チック・コリア+ゲイリー・バートンでも最前列から撮らせていただきました(カメラを消音ケースに入れましたけど)。100Gold Fingersで10人のソロ・ピアノ連続の時でもかぶりつきでやらせていただきました(シャッター音の小さなライカで撮りましたけど)。カメラマンは邪魔なシャッター音を響かせないよう充分配慮しているのです。ベテラン・カメラマンはピアニストの鍵盤のタッチにシャッター音をシンクロさせることができるからです。(ちょっと自慢してみました。)たまに最前列のお客様から怒られることはありますけど……スミマセン!

 キースの実にデリケートな音楽性(性格もそうでしょうか?)の為に、本番中はカメラマンを近づけないのでしょう。どうしても近くから撮らせて欲しいと言う強情(熱心)なカメラマンのリクエストに応えて、サウンド・チェックの一部なら…とOKをもらって撮った事がありました。本番顔負けの真剣な(歪んだ)表情を間近から撮らえることが出来たんだけど……ごそごそ動かれると集中出来ない……おまえのポケットの小銭がジャラジャラうるさいんだと……早々に追い出されてしまいました。残念!

 そんな訳だから、キースとはほとんど話したことがなく、よって関わりがほとんど無く、当然、ここに書くべきエピソードもないのです。しかししかし、ところがところが、ビル・エバンスやハービーやチックのジャズギャラリーはもうやってしまったし、トップクラスのピアニスト:キース・ジャレットを外す訳にはいかないじゃないですか。

 と、言うわけで、あまり書くことないけど、とりあえず略歴から……と書き始めたんです……けど、なんだ、書けちゃったじゃないですか、もうこんなに……。

 勢い余って、もうちょっと書いちゃいましょう。働く日本人の約85パーセントがかかっていそうな「慢性疲労症候群」…、こんな病名があるんですね……ぼくもかかっていそうです。

 '90年代の後半にキースはそんな病に冒されて、活動を一時中断……『MELODY AT NIGHT WITH YOU』を録音した'99年頃、体調は最悪だったらしいです。にも拘わらず、その難病からの復活に合わせてリリースされたこのアルバムは(某キース通のHPに)「身悶えなくしては聴けません。」と大絶賛されています。……当然です。弾いてる本人が身悶えしまくりの演奏ですから

 ところで、その「身悶え」なんですけどね。キースファンからの抗議を恐れずに言いますとですね、ぼくはあまり好きじゃありません。思いを込めて立ち上がって弾いちゃったアンジェラ・アキくらいならまだいいんですけどね。ちょっと身悶えし過ぎじゃぁないでしょうかキースは。

「うめき声を出しながらピアノを弾く姿が印象的」とWikipediaに書かれちゃってます。“うめき声”と言えば小沢一郎さんの“うめき声”が記憶に新しいところですが。“うめき声”は“身悶え”と同じく好きではありません。オスカー・ピーターソンはまだ許せるんですけど、キースの場合は、うめき過ぎで気持ち悪くなりそうです。レコーディングの時にもうちょっとカット出来ないんでしょうか?アイヒャーさん。

キース・ジャレット:Keith Jarrett (allmusic.comへリンクします)
→ジャズ/クラシック・ピアニスト/ 1945年5月8日~