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 断捨離ブームのせいで、モノを持たないことが美徳とされる風潮がある。モノも脂肪も貯め込む一方の人間にとっては住みにくい世の中になったものだ。そんなことはわかっちゃいる。わかっちゃいるけどやめられないと植木等も言っているではないか。3年前の週刊誌もVHSテープも大量の紙袋も、いつか何かの役に立つのでは、と捨てられずにいる日々――。

 そんな悩み多き人たちに救いの手を差し伸べる番組かと思った。番組紹介に“必要ないのに捨てられない……邪魔で仕方ないのに捨てられない……。それらを「捨てる」お手伝いをしながら、モノとひとにまつわるさまざまな人間ドラマを紹介する!”とあったから。モノとの上手な別れ方を教えてくれるのかと……。

 千原ジュニアを筆頭に、山村紅葉、小倉優子、ロッチ中岡ら芸能人が番組特製の廃品回収ワゴン車に乗り、街に出向き、「捨てたくても捨てられないモノ」を回収していく。

 「48年前のタキシード」「39年前に買ってもらった娘のひな人形」「息子に貰った50万円のマッサージチェア」「20年間倉庫に眠る壊れたジュークボックス」「50年前の和文タイプライター」「別れた夫との結婚式ビデオ」「亡き夫の闘病記」などが次々と回収されていく。捨てた人たちは、いい機会を与えられたとばかり清々しい顔をしている。これはいい企画かも、と思ったそのとき……。

 次に出て来た母娘が、「お父さんのプラモデルを捨てたい」と言い出した。父親が大事にしまっているガンプラ(ガンダムのプラモデル)が邪魔、ということだが、父の言い分は「息子が大きくなったときに一緒に作ろうと思って大事にしまっていた」と。「私にとっては価値のあるものなんです」と必死に抵抗するも、娘は「要らないと思う」、妻は「どうせ死んだらただのゴミでしょ」とにべもない。ジュニアらが父を説得し、1つだけ捨てることに。

 これまでは自ら捨てたい人たちだったが、このお父さんは違う。捨てたくないと言っているものを無理に捨てさせるとは酷すぎる。しかも、どれだけ大量にあるのかと思ったら小さな段ボール1つだけ。父には段ボール1つの自由もないのか、と気の毒になった。

 「開運!なんでも鑑定団」を放送している局がモノを捨てよ、とは何事ぞ。テレ東の素人がらみの番組は幸せな気持ちにさせてくれるものが多いのに、これはがっかり。ガンプラを捨てられたお父さんになり代わり、「今月のダラクシー賞」を贈りたい。

※『GALAC(ぎゃらく) 9月号』より

桧山珠美(ひやま・たまみ)/好きな料理番組、第1位は「セイシュンの食卓」の「ルミ子と賢也の愛の料理」(2人がラブラブでダンスしながら料理するという斬新過ぎる企画。また見たい。なんとか復縁して貰えないか)