●地上波が忘れた「不良性感度」を体現する

 シーズン2以降、風俗やAVジャンル以外にも「結婚相談所スーパー仲人」「元覚醒剤中毒者」「遺品整理士」「戦場ジャーナリスト」「女性バックパッカー」など、“ダラケさん”のバリエーションを増やしてきている。安村氏は、亡骸の後始末をする「葬祭ディレクター」の回がもっとも印象的だそうだが、筆者は「還暦AV男優」と「スーパー温泉コンパニオン」が特に印象に残る。前者はその存在の意外性、後者は実際の(ゲスい)宴会の雰囲気を包み隠すことなく見せてくれて、何とも得をした気分になった。しかし毎回、よくもまぁさまざまな世界の当事者を呼んでこられるものだと感心することしきりだ。

 「構成作家さんも、地上波でできないことができるということで、すごく熱心に企画を練ってくれます。またリサーチ会社の人たちの情報提供も大きいんですよ」(安村氏)

 番組冒頭には毎回出演する“ダラケさん”に対して個別にインタビューを行ったうえでクイズに入るのだが、実はここで聞ける話だけでもかなり面白い(時間の関係で短縮されるのが残念)。この番組が扱う情報は、男性向けの実話誌が扱うようなジャンル(性風俗、AV、裏社会、オカルトなど)が多いのは確かだが、堅気の人なら一生知ることのない魑魅魍魎の世界が、実は確実にこの世に存在しており、それを垣間見る愉しみというものもまた、確実にある。筆者のように、そんな密かな好奇心を持つ者に向けて、「ダラケ!」は当事者の生々しい体験談を最大限生かしつつ、クイズという形に落とし込んでショー化(昇華、と言いたいぐらいだ)に成功している。

 ちなみに、シーズン7の第2回「格闘プロゲーマー」が好評だったことで、スピンオフ企画として「ストリートファイターV最強王座決定戦」も生まれた。また地上波から締め出された「ちょっとエッチな水泳大会」も、特番として15年から計2回放送している。

 やはりこの番組の肝は、キワモノ的なジャンルを単なる興味本位や遊び半分で扱わない基本姿勢にあるのかもしれない。かつての「トゥナイト」で山本晋也カントクが手がけた「大人の真面目な社会学」を彷彿させる濃い情報を毎回聞けるのが、愉しくて仕方ない。

鈴木健司(すずき・けんじ)
本誌副編集長、メディア・ライター/1963年生まれ。2017年2月から「ダラケ!」シーズン10がスタートします。その第1回は「極道の妻たち」。実は収録を見学させてもらいました。めちゃくちゃ濃いです。