ちなみにNHKは1月23日18時の「ニュース」で、世耕弘成官房副長官が「TPPの署名式に甘利大臣を派遣の方針」という安倍首相の意向を講演で明かしたことを報道。世耕氏は「安倍首相は日本を立て直す仕事なら自分が死んだっていいという思いで正面から取り組んでいる」と話した、と伝えた。TPPの話まではともかく、後段は首相のPRでしかない。疑惑の大臣を派遣することの是非を問う声が野党から出そう、と伝えるならまだしも、このPR。NHK政治部も質が落ちたものだ。

 大学生ら15人の命を奪った長野県軽井沢町でのスキーバス事故。ニュース番組の報道は映像重視の断片的なものが多く、事故の背景であるツアー会社やバス運行会社の問題点を掘り下げた報道は数えるほどで、1月18日のNHK「ニュース7」「ニュースウオッチ9」、19日のTBS「NEWS23」くらい。そのなかでも22日の「ニュース7」は規制緩和での過当競争や運転手の給与低下のデータを入れ、わかりやすかった。

 最近の事件事故報道では映像のバリエーションが多くなった。SNSに残された犠牲者の画像を駆使してその人となりを伝え、監視カメラ映像で事故直前の運転を分析する。しかし直接的な原因に目を奪われるばかりで、背景にある労働環境など構造的な大きな問題にあまり目を向けていないと感じる報道も目立った。

●憲法よりも薬物、不倫…… 対峙する相手を見極めた報道を

 新しい年になって以降、株安進行に歯止めがかからない。これはベッキーよりSMAPより清原よりも、実は相当に深刻なニュースである。特に年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が国民年金、厚生年金の積立金135兆円の運用で株式比率を上げているので、年金が目減りする恐れが高くなっている。この問題をニュース番組はほとんど触れていないが、1月24日のTBS「サンデーモーニング」がほぼ唯一放送していた。専門家が「国家のばくち」「カジノ経済に陥っている」と危機感を募らせた。

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