青い空と海、南国のリゾート、島の素朴な人々。そんなイメージに反して、沖縄にはまったく別の顔がある! 沖縄県の県民所得は全国最下位。賃金は全国の最低水準。貧困率は全国平均の2倍。それはいったいなぜなのか。樋口耕太郎『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』は島の知られざる実情を綴ったショッキングなレポートだ。

 沖縄の貧困は、労働者・消費者・経営者という<三者の利害が合致することで成り立っている>と著者はいうのだ。

 まず昇進も昇給も望まない労働者たちがいる。優秀でも管理職にはなりたがらず、パートタイマーは正社員になりたがらない。なんで!? ざっくりいえば、目立ちたくないからだ。

 消費者も保守的だ。沖縄では昔からの定番商品が売れ続けている。松山容子の顔がついたボンカレー、A1ソース、まるこめ酢、ランチョンミート。売れる理由は品質でも価格でもなく「みんなが買っているから」「いつも買っているから」。

 ウチナーンチュの間では<物事を変える人、社会を発展させる人に対して(目に見えない、しかしはっきりとした)同調圧力がかかる>。弱いものいじめならぬ「できるものいじめ」。不良品でも文句はいわず、外食は知人の店で。すると経営者にとっては「現状維持こそが最も利益を生む」ことになる。県内では圧倒的なシェアを誇る商品も県外では競争力を持たず、組織の改編は至難の業。

 さらにはここに「なんくるないさ」の精神が追い打ちをかける。それは問題から目をそらす「何もしなくてもOK」と同じ意味だと著者は手厳しい。

 ええーっホント? と思いながらも、ふと気づく。それって沖縄だけの特徴なのか。そうなのだ。<沖縄問題とは、濃縮された日本問題である>
 沖縄在住16年。現在は沖縄大学で教鞭を執る著者が「沖縄タイムス」電子版などで好評を博した沖縄経済論。地方再生を目ざす人全員への愛のムチだ。

週刊朝日  2020年11月6日号