読んでいるだけで鼻の頭に汗がにじみ出てくる本だ。南米原産のこの植物は、コロンブスがヨーロッパに伝えて以降、世界の津々浦々にまで浸透し、栽培され、品種改良を経て各地の食文化に刺激と彩りを添えてきた。著者はその伝播の跡を辿るように世界を周遊し、各地の品種やそれを使った料理を食べ尽くしている。

 キムチや四川料理、タイ料理などは日本人にもおなじみだが、アフリカやブータンにまでその辛味を愛する食文化が広がっていることを知る人は少ないのではないか。

 そもそも、動物に食べてもらわなければ意味のない果実に、これほどの激烈な刺激が潜んでいること自体が不思議だ。本書はそんな謎にも迫りながら、人類がいかにしてその辛味と親しんできたかを説き明かす。辛味と旨味がからみあうトウガラシの世界への最適の案内書。(平山瑞穂)

週刊朝日  2020年9月11日号