昔はアメリカがくしゃみをすると日本が風邪をひくといわれた。いまは中国がくしゃみをすると日本が風邪をひく。両国の関係はそれほど深い。中島恵『中国人は見ている。』は両国間を長年行き来してきた著者が日中の習慣の差を紹介した興味津々の本。意外な話、さもありなんな話が満載だ。

 たとえば<中国人が日本で「あまり行きたくないところ」といえば中華料理店だ>。え、なんで?と思うけど、理由は<片栗粉を使いすぎです。ドロドロになったあんかけは、どうしても中国人の口には合いません>。日本式の焼き餃子は例外的に人気があるけど、焼き目を上にした盛りつけは<なぜ日本人が餃子を裏返して盛りつけるのか、理解できない>。

 日本人とお仕事するのも大変です。<『あの件よろしく』といわれても、一体どの件なのか……>。あと、日本人のメールで特に困惑するのが<「お手すきの際にご返信……」という一文>。お手すきって具体的にいつ?

 そうかと思えば<日本人は会社ではとても真面目>なのに<飲み会での豹変ぶりに驚きました>。<いちばん嫌なのは、直属の上司が私を“ちゃんづけ”することです>。日本じゃ大目に見られてきたトホホな習慣も、グローバルな視点で見たらヤバイのだ。

 いまや中国のGDPは日本の約3倍。日中間のビジネス環境は劇的に変わった。日本人が上、中国人が下という日系企業内の暗黙の了解も今は昔。日本人と中国人の立場は対等か、逆転することも多い。それに気づかぬ日本人が関係を悪くしている場合もある。

 まあでも日本人にもカワイイとこはあるからね。<日本人のほうが中国人よりも烏龍茶を飲んでいる>とか、<中国より日本のほうが断然「三国志」オタクが多い>とか。中国人は東京よりも大阪が好きという話に膝を打った。大声で話すところが似ている。中高年女性の服のセンスが中国と通じる。家賃が安い。誰にでも話しかける。コロナ禍で中国人観光客が消えた日本は寂しい。行き来が再開される日が早く来てほしいわ。