SOGIと書いて「ソジ」と読む。Sexual Orientation(性的指向)とGender Identity(性自認)の頭文字をとった言葉である。SOGIハラとはつまり、性の多様性に対するハラスメントのこと。

 言葉は耳なれなくても、その実態はみんな知っているはずだ。たとえば学校で、廊下でじゃれあっている男子を見た先生が「おまえら、ホモか!」といい、周囲の生徒が「気持ち悪い~」と爆笑する。これが典型的なSOGIハラ。「なくそう!SOGIハラ」実行委員会編『はじめよう!SOGIハラのない学校・職場づくり』は日常にひそむそんな差別やいじめをなくすための入門書だ。

 性的指向は恋愛や性的な関心の対象がどの性別に向いているか、性自認は自分をどの性と認識しているかを指す。SOGIはLGBTより広い概念で、SOGIハラはその人がLGBTであるか否かにかかわらず発生する。<「おまえ、“こっち系”かよー!」「ちげーよ! あはは……」>みたいなやつとかね。<外見や行動が「男らしく」ないからといって「オカマ」等といじめられることがあるとすれば、必要なのは実際にその子が同性愛者かどうかを問うことではなく、そうした多様さを受け入れない社会の側の偏見を直視し、変えていくことではないでしょうか>ってことなのだ。

 ちょっとドキッとしませんか。からかい気分で「ホモ」「レズ」「オトコオンナ」とか口にした経験がある人もいるだろうし、「ホモネタ」はテレビで普通に流通しているし。欧米ではすでにSOGI差別を禁止する法制度もできている。日本の文科省も2015年に、性同一性障害などにかかわる配慮を求める通知を出した。

 そんな人、私のまわりにいないけど、と思うのは知らないだけ。日本人の中でLGBTにあたる人は11人にひとりといわれる。小学校ならクラスに2~3人。左利きと同じくらいの割合だ。<「いない」のではない、「名乗り出づらい」のです>。学校や職場での事例や対処法まで記した本書で、まずは学ぶことからはじめたい。

週刊朝日  2019年11月15日号