義母が急死し、遺品整理に悩まされる女性が主人公の長編小説。エレベーターのない団地で、片付け業者の見積もりは100万円。我が家にそんな余裕はない。自力でなんとかしようとするのだが……。

 姑の部屋は「もったいない」を象徴するかのように、天袋にまで箱がギッシリ。十数年前に亡くなった義父の洋服まで出てきた。仕事を理由に妻任せにしていた夫に、こけしなどが入った人形ケースを「捨ててもいいよね」と相談すると、「思い出の品」だからダメ。義母の服はサイズを直して着たらいいとも言われ、プチンと切れる。離婚危機を予感させるが、団地のお年寄りが片付けに協力するなど思わぬ展開から、義母の人となりを再発見し……。

「終活」を題材にした小説でベストセラーを連発する作者ならではの現実感のあるコミカルさがいい。(朝山 実)

週刊朝日  2019年5月17日号