出版業界紙「新文化」編集長だった著者が全国の本屋をめぐったルポだ。

 2014年に大阪で開かれた、新刊書店員たちが勤務店を明記して出品する「書店員さんで一箱古本市」の章では、参加者に会うために全11店を回るなど、取材紀行には時間と手間がかかっている。

 印象深いのは、大手書店を退社し、那覇市で3坪の「日本一狭い古本屋」ウララを営む宇田智子の章だ。取材前日、定休日だと承知で訪れ、営業日との違いを見る。当日は腰を落ち着け、来客の度にインタビューが中断される。

 数日後に再訪した際、保育園から子供が発熱したと電話があり、店じまいをしかけた途端、客が途切れなくなる。その時の宇田の対応から個性と仕事ぶりが窺い知れるのがいい。たまたま長居をしたからこそ目にする日常がある。

週刊朝日  2018年9月14日号