経済取材に40年携わった著者が日本を代表する経営者に迫った一冊。中内功、鈴木敏文、出井伸之、豊田章男、孫正義、柳井正など戦後を代表する18人が並ぶ。

 本書が秀逸なのは異なる経営者を論じながらも、章ごとに共通項を括りだし、日本企業の特徴やあるべき姿を論じていることだろう。例えば東芝の粉飾決算は個別企業の問題でなく、日本型企業の遺伝子と指摘する。そこでは、世間で名経営者として礼賛される土光敏夫の「影」の部分にも目をつぶらない。一方、ヤマト運輸の小倉昌男や京セラの稲盛和夫など実業のみならず公益を考え、時代に足跡を残した経営者を理想と位置づける。

 取材現場で積み重ねた事実から資本主義を俯瞰する姿勢は、本書に単なる経営者列伝でない広がりを持たせている。

週刊朝日  2018年8月3日号