「別冊宝島」の編集者となるまでを綴った回想記だ。

 小学校では「一日誰とも話さない」のが苦にならない転校生だった。大学卒業後、東京・新橋の小さな出版社に就職。その後、仲間と編集プロダクションを作り、子供が生まれても事務所で寝泊まりして創刊したティーンズ雑誌が「国会論争」を招く。教団広報の担当者だった人物との関わりからオウム事件をたどる「サティアンの奇妙な一日」や、元上司が海外宝くじの専門誌で資産を築いたことなど、経済バブルの足音が聞こえるような書き方が面白い。

 高田馬場の喫茶店でボブ・マーリーが歌うレゲエの名曲を知った場面から書き起こすなど、1月に亡くなった漫画原作者・狩撫麻礼の、バブルに一石を投じたマンガ『迷走王 ボーダー』に通じる、エッジの利いた本だ。

週刊朝日  2018年3月23日号