刑務所の読書会運営に携わったカナダの女性ジャーナリストによるノンフィクション。殺人や強盗などで服役する受刑者に囲まれ、当初は恐る恐る関わっていた著者だが、受刑者たちと交流するにつれ、のめり込んでいく。
 参加者が読書を通じて切実に人生に向き合おうとするから、「刑務所の単なる読書会の記録」にならず、読み手を惹きつける。受刑者の一人は会話といえば犯罪自慢ばかりの現実からの唯一の逃げ場であったと振り返る。別の参加者は「おもしろいだけの小説にはもう興味がない」と語る。罪を犯した経験から発せられる言葉は重みがある。
 取り上げる本は、日本では馴染みのない本もあるが、読みたくなる。自由が制限される中で必死に読み込み、感想を述べているのだから、面白くないわけがない。

週刊朝日 2016年10月7日号