テレビの報道はなぜ自主規制だらけなのか。第2次安倍政権はなぜ延命に成功しているのか。ネトウヨにはどう対処すべきなのか。
 旬な話題が次々登場。『淳と隆のなんだかおかしいニュースの裏側』はロンドンブーツ1号2号の田村淳とジャーナリストの上杉隆が語り下ろした新刊書だ。二人は「淳と隆の週刊リテラシー」(TOKYO MXテレビ)でレギュラーを務める仲。〈この番組にゲストとして出る人は、正直にモノを言いすぎるからキー局からはあまり呼ばれない(笑)〉(淳)と自負するだけあり、本書もメディアリテラシーを学ぶのにぴったり。
 ネット上のキーワードを世論と誤解して過大視するニュース番組は〈末期的症状です〉と断定して田村淳はいう。〈ノイジー・マイノリティ(饒舌な少数派)の意見をマジョリティ(多数派)と誤解して、テレビマンがネットに引きずられるべきではない〉〈テレビマンが時間に余裕があるネット民の意見ばかり聞くようになれば、テレビの中身はものすごく偏ってしまいます〉
 悪名高き記者クラブ制度を一貫して批判してきた上杉隆は〈政治家子女のテレビメディアへの「コネ入社」〉にもメスを入れる。〈有力な政治家、官僚、特に放送行政に強い政治家の子女を入社させれば、何かあったときの「人質」を握ることになります〉〈それは、テレビメディア萎縮につながる、見えない政治圧力の証左にほかなりません〉
 過激そうに見えて、内容はいたって真っ当。権力とメディアの関係、も彼らの手にかかればこうなる。
 メディアに圧力がかかるのは当たり前。〈権力側から圧力がかからないような取材は、権力報道とは言えません〉。圧力がかかったときには〈権力者には敬意を払いながら真正面からぶつかり、彼らが触れてほしくない情報でも正々堂々と、そして淡々と報じればいいのです〉。
 こういう正論が煙たがられるのだなと思いつつ、既存のメディアの腰の引け方がよーくわかる一冊だ。

週刊朝日 2015年11月13日号