死に支度

話題の新刊

2015/01/07 17:12

「どのように死を迎えるか」ということは、「どのように残された生を全うするか」ということでもある。92歳という著者の年齢を考えると、このような問いを意識するのは自然なことだろう。本書は、古参のスタッフたちから一斉に辞意を伝えられた寂聴さんが「人生最後の革命」を決意し、文芸誌の連載「死に支度」を開始するところから始まる。
 しかし、本書は「死」という言葉がはらむシリアスさとはほとんど無縁で、むしろ寂聴さんの天衣無縫さが際立った私小説、または追想録となっている。「~なう」「○○キャラ」といった若者ことばを使いこなし、自身の老いに関しても、「死の上に張った薄い氷に乗っているような感じ」といった絶妙な比喩で言い表す。26歳のモナを中心としたお手伝いさんたちとのやり取りからも、寂聴さんの人間的な魅力が伝わってくる。
 文章の瑞々しさに驚きつつ、両親や姉、文学の師を看取ってきた、その深い死生観にたびたびハッとさせられる。「幽霊は死なない」という言葉通り、寂聴さんにはこれからもさらに多くの言葉を紡いでほしい。

週刊朝日 2015年1月16日号

死に支度

瀬戸内寂聴著

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死に支度

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