書評『白菊―shiragiku―伝説の花火師・嘉瀬誠次が捧げた鎮魂の花』山崎まゆみ著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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《話題の新刊 (週刊朝日)》

白菊―shiragiku―伝説の花火師・嘉瀬誠次が捧げた鎮魂の花 山崎まゆみ著

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西條博子書評#話題の新刊

 信濃川の河川敷を舞台に、国内最大級の規模と芸術性を見せる新潟県長岡市の花火大会。「日本一感動する花火」と評され、最初の打ち上げ花火「白菊」はなぜか涙を誘う。この花火大会の原型をつくったのは花火師、嘉瀬誠次。半世紀以上にわたり打ち上げを一身に請け負った92歳の道のりを、ノンフィクションライターが追った。
 戦後初の三尺玉「千輪菊」も、花火大会で歓声が起きる「ナイアガラ大瀑布」も、嘉瀬が考案した花火だ。彼の傑作は、愚直なまでの職人魂の上に成り立つ。五輪閉会式初の花火となったロサンゼルスには予算の1.5倍もの花火玉を持って行った。そんな嘉瀬は出征花火に送られて戦地へ赴き、シベリア抑留を経験している。1990年の夏、ハバロフスクでの花火大会が実現し、終盤に白一色の花火がしんなりと咲いた。嘉瀬はそれを「白菊」と命名する。「白菊」はシベリアで命を落とした仲間への鎮魂の花火だったのだ。
 彼の花火は「間がいい」らしい。間に粋を感じさせる花火。読み終えた後、花火師の浪漫が胸に迫る。

週刊朝日 2014年8月29日号


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