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やくざ・右翼取材事始め
話題の新刊
2014/02/13 16:02
好奇心から思わず手を伸ばしたくなるタイトルだ。やくざ・右翼取材の第一人者といえるジャーナリストが、約半世紀にわたる自らの仕事を回顧した一冊である。
著者は1960年代より、戦前右翼の反体制機運や、窮民側に立ったやくざの義侠精神に惹かれ取材を開始した。右翼・やくざを通して社会構造の深層を描くことに重点を置いたと著者が語る通り、当時の国内状況や、彼らの生き様が克明に描写される。たとえばマスコミにほとんど顔を見せなかった三浦義一。戦後GHQにも強力な人脈をもった右翼の大物だが、敗戦直後、周囲が次々と自決していく。陸相・阿南惟幾、国家主義者・影山庄平……。戦後は岸信介や佐藤栄作とも太いパイプをもっていたという。
とりわけ強調されるのは「差別」の問題だ。著者は取材開始当初、歴史学者・奈良本辰也から「差別がやくざを生む」と教わったという。在日韓国・朝鮮人や被差別部落出身者の中には、貧困環境ゆえやくざになる人もいた。「もう一つの戦後史」を考える一つの手がかりを提供している。
※週刊朝日 2014年2月21日号
やくざ・右翼取材事始め
猪野健治著


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