恐竜のことをなんで鳥類学者が、と思うだろうが驚くなかれ、鳥の“正体”は恐竜なのだという。その証拠に大昔の、いわゆる恐竜は現在、「非鳥類型恐竜」とよばれ区別されている。鳥類学者で恐竜大好きの著者が、現世恐竜・鳥の生態から恐竜のリアルな姿をあれこれ考えるユニークな恐竜本。
 近年、羽毛のある恐竜の化石が次々に発見され、体が羽毛に覆われた恐竜がたくさんいたことがわかってきた。恐竜というのは骨格も見た目も、ゴジラより鳥に近い風体だったらしい。では彼らも鳥のようにカラフルだったのか、羽で求愛ディスプレイをしていたのか。「渡り」のような集団移動をしていた可能性、歩行スタイルや子育ての方法など、鳥類学者が考える恐竜たちの生活は具体性に富む。のっぺりした灰色で、ただのしのし歩いているだけだった頭の中の恐竜が、個性豊かな生き物に鮮やかに書きかえられていく。
 一恐竜ファンという立場で、のびのびと想像を広げる著者の筆は実に楽しげ。貧相なイメージや先入観で凝り固まった頭を、ぽんと自由にしてくれる。

週刊朝日 2013年6月28日号