書評『細菌が世界を支配する』アン・マクズラック著/西田美緒子訳 |AERA dot. (アエラドット)

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《話題の新刊 (週刊朝日)》

細菌が世界を支配する アン・マクズラック著/西田美緒子訳

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谷本束#話題の新刊

細菌が世界を支配する

アン・マクズラック著/西田美緒子訳

978-4826901666
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 細菌というと、バイキンだなんだと悪者扱いされるのが常だが、とんでもない。すべての生物が生きていられるのも、地球環境が健全に維持されるのもこれみんな細菌のおかげだという。細菌の生態から歴史、近年重要性を増す微生物生態学まで、知られざる細菌の世界を案内している。
 彼らは地表だけでなく、6万メートルの上空や超高圧の地下深部、深海とあらゆる場所にいる。全細菌の重さは、なんと人類65億人の質量の2千倍以上。膨大な数の彼らは有機物のみならず、鉱物でも金属でもどんどん分解して、生態系を維持するための物質を再生産する。生命活動に絶対必要な窒素を環境に循環させるのも細菌で、早い話が私たちの食べ物も自分の体も、製造元は全部細菌なのだ。
 驚くのは細菌の力を利用したテクノロジーだ。病気治療をはじめ、有害化学廃棄物を出さないクリーンな生産技術、石油に代わる新エネルギー創出、果ては美術品の修復まで可能にする。
 小さな細菌たちに生殺与奪の権を握られているという逆転の感覚に、ゾクゾクする。

週刊朝日 2012年11月23日号


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