世界中のスラム街や犯罪多発地帯を渡り歩くジャーナリスト・丸山ゴンザレスが、取材先でメモした記録から気になったトピックを写真を交えて紹介する。

【写真】タイ・バンコクでは「客と嬢がフェイスガード着用で行為」に及ぶことも

リオ・デ・ジャネイロ屈指の歓楽街ヴィラミモザ(2018年、丸山ゴンザレス撮影)
リオ・デ・ジャネイロ屈指の歓楽街ヴィラミモザ(2018年、丸山ゴンザレス撮影)

■明暗わかれる風俗業界

 コロナ禍で世界中がパニックに陥っている。なかでも異様な状況なのがブラジルだ。ボルソナロ大統領が新型コロナウイルスを軽視する発言を続けており、会見の最中にあえてマスクを外すパフォーマンスを見せるなど、徹底的な「コロナ軽視」の姿勢である。

 だが、言うまでもなくブラジル国内は深刻な状況だ。いまや感染者の累計は215万人を超え、米国に次いで感染者数第2位(7月22日現在)である。ブラジルの一般市民たちはどう思っているのだろうか。サンパウロ在住の友人は「みんな食うのに必死だから、今も普通に働いている」と話す。

 しかし、経済が順調に回っているかといえば、そうではない。友人によれば、「失業者が目に見えて増えている」といい、経済的なダメージは大きいようだ。

 それは“風俗業界”についても同様である。ブラジルの風俗にはいくつかの種類があるが、代表的なのが「ボアッチ」である。ボアッチとは、大きなホールで食事や酒を楽しみながら、店内にいる女性を交渉次第でホテルへ連れ出せるというものだ。これはブラジルの風俗としては伝統的なスタイルである。だがボアッチの場合、店内で大勢の人が密集してしまうこともあり、いまだに多くの店が夜間営業を休止しているという。

「昼から夕方までは営業しているけど、風俗店がその時間に開いていてもね…」

 友人が指摘するように、多くの店では閑古鳥が鳴いているという。

 一方で、『丸山ゴンザレスが香港の“風俗マンション”に潜入してみたら…』(1月16日配信)で紹介した「置屋」のように、一対一で対面する風俗であれば“密”になることもなく、新型コロナウイルスを気にしない人が行くこともあるようだ。

「ブラジル人はあまり気にしないで出歩いています。出歩かないほうが少数派ですよ」

 歓楽街のヴィラミモザで働いている女性たちの多くは低所得者層とされており、今後、経済的に困窮する人が出てくるかもしれない。感染のリスクがあっても、彼女たちは働かざるを得ないのである。(文/丸山ゴンザレス)

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丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス/1977年、宮城県出身。考古学者崩れのジャーナリスト。國學院大學大学院修了。出版社勤務を経て独立し、現在は世界各地で危険地帯や裏社会の取材を続ける。國學院大學学術資料センター共同研究員。著書に『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』(光文社新書)など。

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