いかがだろうか。気にする人ならレベル1の「特別な注意が必要」の段階で渡航を諦めるのではないだろうか。単独で取材に行くときには、危険情報は参考程度くらいに参照する。だが企画として出版社やテレビ局にプレゼンするときには、この「海外安全ホームページ」がかなり重要になるのだ。

 といっても、危険レベルが高いほど企画が通りやすいわけではない。むしろ「レベルが設定された場所」というだけで企画が頓挫することもある。「レベル1」でも十分“ヤバい場所”認定を受けるのだ。

 これまでは、「別になんてことないです。むしろ最初から警戒していく分、安全に取材できますよ」なんて苦しい理屈で、なんとか企画を承認してもらってきた。

 私が実際に訪問したなかでの最高は「レベル2」だ。ナイジェリアやフィリピン、メキシコのそれぞれの国の一部などがこれに該当(取材当時)していた。ナイジェリアとフィリピンにはイスラム過激派のテロリストの拠点があるし、メキシコは麻薬戦争の激戦区である。フィリピンのミンダナオ島・マラウィ市で起きたアブ・サヤフ(イスラム過激派)と国軍の戦闘は2017年5月から約5ヵ月ほど続いて甚大な被害を出した。メキシコの南部を取材で訪れた際には、戦闘に出くわしたし、麻薬カルテルに脅されたこともある。ナイジェリアはボコ・ハラム(イスラム過激派)が活動を活発化させており、外国人ジャーナリストがターゲットにされることもある。

 はっきり言って、どれも“ヤバい場所”である。今思えば、無事に戻ってこれたのは運がよかっただけである。今回発令されているレベル3は、現状ではこれらの場所よりも渡航中止をより強く求めるランクに位置付けられたことになる。

 たとえば同じレベル3だと、スーダンやナイジェリアなど、テロリストの活動が活発な地域が挙げられる。レベル4になると、リビアや南スーダン、ソマリア、そしてシリアといった戦闘行為が現在も断続的に起きている場所である。

 繰り返しになるが、いまレベルが引き上げられているのは「感染症危険情報」であるから、一概に従来の危険度と比較できるわけではない。だが、「海外安全ホームページ」でレベル3という表記が出されるのは、とんでもないことなのだ。どれほどの危機感をもってこの対応を受け止めるべきか、その一端が少しでも読者に伝わってくれたらと思う。(文/丸山ゴンザレス)

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丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス/1977年、宮城県出身。考古学者崩れのジャーナリスト。國學院大學大学院修了。出版社勤務を経て独立し、現在は世界各地で危険地帯や裏社会の取材を続ける。國學院大學学術資料センター共同研究員。著書に『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』(光文社新書)など。

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