図3「レンズ選びで重視するポイント」
図3「レンズ選びで重視するポイント」

「大きくて重たいレンズはいりません。広角、標準、望遠ズームとマクロレンズが基本セットです。この4本を無理なく背負って山を歩ける重さであってほしい。16~50ミリと50~200ミリの広角、望遠ズームの組み合わせのように、2本で超広角から望遠200ミリまでカバーできたらうれしい。画質に妥協して高倍率ズームという選択肢はないですが、2本態勢で軽くできないかと。レンズ単体ではなく、システムとしてどのように運用できるかを重視しています」

 程度の差こそあれ、多くの写真家が同様なことを意識している。いかに描写力が優れたレンズであっても、あまりにも重くて大きければ、行動力や被写体への注意力がそがれてしまう。それによってシャッターチャンスを逃してしまうかもしれない。それでは本末転倒である。

 それは「所有レンズの本数」からも読みとれる。11~20本の人がもっとも多いが、「ふだんの撮影で持っていくレンズの本数」はずっと少なく、1~5本がふつうである。100本以上を所有するものの、実際の撮影ではレンズ一本で勝負、という写真家もいるのだ。

 大げさにいえば、写真家一人ひとりに経験や体力などを考慮して緻密に練り上げた撮影戦略があり、描写力だけでなく重さや大きさなども加味して被写体に合ったレンズ選びをしているのである。その結果が、

「愛着が湧くレンズ」(秋山亮二)
「写真を撮ろうと思わせるレンズ」(大和田良)
「操作性も描写性能も自分にフィットして、次の撮影でも使いたいと思わせるレンズ」(藤井智弘)

 となるのだろう。
 
 確かに理想を言えば、「明るくて、小さく、重くなくて、すばらしく写るもの」(川田喜久治)、「開放値が明るく、シャープで描写力が高く、小さなレンズ」(伏見行介)が求められるのかもしれない。
 
 その一方で、「小さくて、そこそこ写りがよければOK」(清水哲朗)という控えめな要望からは写真家の達観した境地が感じられ、興味深い。

次のページ
「ボケ味」はどれくらい重視されている?