図1「写真家128人と被写体一覧」
図1「写真家128人と被写体一覧」

 ときどき、「神レンズ」なる言葉を耳にすることがある。著名な写真家が愛用するレンズがそうなのかもしれない。そんなすごいレンズを使ってみたい、という読者もいるだろう。

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 撮り手にとって「よいレンズ」とは何だろうか。写真表現とレンズの使いこなしとの間にはどんな関係があるのか。その一端を浮かび上がらせるため、まずはレンズに関するアンケートを128人の写真家(図1)にお願いした。

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■「神レンズ」は存在するのか 

 設問が多く(しかも面倒)、正直どれほどの回答が得られるか心配だったが、さまざまな分野の写真家から真摯な意見が寄せられた(図2)。びっしりと書き込まれた回答用紙を手にすると、写真家のレンズに対する深い関心と熱い思いが伝わってきた。

 写真家の言葉を引用しながら「よいレンズ」とは何か、その実像に迫っていこう。

 アンケートの回答で「よく使うレンズ」「好きなレンズ」「ほしいレンズ」に挙がったのは約200本。そのほとんどはよく知られた定評のあるレンズばかりである。

 回答を集計して、全体的に強く感じたのは(再確認といってもいい)、写真家にとってレンズとは、作品を写し出す、またはクライアントの要求を達成するための道具である、ということだ。写真家が求めるレンズのイメージを紹介していこう。

【求めるレンズのイメージに関するコメント】

「必要な撮影について基本的な性能を持ち合わせていること」(菊池哲男)
「求める写真が撮れるレンズ」(小澤太一)
「表現意図を素直に写してくれるレンズ」(中田昭)
「数少ないシャッターチャンスを確実に仕留められるもの」(中野耕志)
「自分のイメージどおりの絵づくりができる」(野口純一)
「仕事の目的にふさわしいもの」(畠山直哉)
「こう伝えたい、こう表現したいという感覚的なものを描写できるレンズ」(林典子)

 写真家の声をさらに分析していくと、レンズには総合力が求められることが浮かび上がってくる。レンズは単に「写りがよい」だけではダメなのである。

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「描写性」とともに多くの声が寄せられたのは…