所有レンズの本数は、20本を超えると急速に減る。ほとんどの写真家が1~5本で撮影をこなしていることがよくわかる
所有レンズの本数は、20本を超えると急速に減る。ほとんどの写真家が1~5本で撮影をこなしていることがよくわかる

■自分の世界観を表現するレンズ

 「重さ」「大きさ」と並んで重視される「F値(明るさ)」についても分析してみよう。

 明るいレンズは前玉が大きくなり、重量も増してしまう。持ち運びの点では不利である。そのため、高砂淳二さんは「F値が明るめでも大きすぎないもの」と注文をつける。
 
 一方、明るいレンズは豊かなボケ味が得られるという大きなメリットがある。これは前に書いた解像力とは方向性の異なる描写力である。

「ボケ味を追求した重量級の玉は使い勝手が悪いのでいらない」(小野寺宏友)という声もあるが、ボケ味を重視する写真家はかなり多い。

【ボケ味に関するコメント】

「やわらかく自然なボケ味」(宇佐見健)
「体験してないボケ感のレンズ」(川合麻紀)
「小さくて軽いボケ感のいいズームレンズ」(百々新)
「美しいボケ味とやわらかな描写力」(中村征夫)
「ボケ味がなめらかできれいなこと」(並木隆)
「自然な描写力ときれいなボケ味」(ハナブサ・リュウ)
「シャープでボケが美しい」(水越武)
「ボケる!寄れる!シャープ!」(吉住志穂)

 ニコンのレンズ設計者、大下孝一さんによると、写真家にとって「よいレンズ」の方向性は二つあるという。一つは被写体をクリアにとらえる解像力に優れたレンズ、もう一つは、ボケ味も含めた、いわゆる「味のあるレンズ」である。

「よく写るレンズは山のようにあるので、それでしか得られない世界を備えたレンズ」(山田久美夫)を、という声もたくさん寄せられた。

【レンズの持ち味に関するコメント】

「透明感が感じられるもの」(浅井慎平)
「想像力を刺激する」(阿部淳)
「写したもののツヤが出て立体感のある描写をする」(北井一夫)
「独自の世界観を持ったレンズ」(桐野伴秋)
「立体感を写してくれるレンズ」(鷹野隆大)
「自分の世界観を具現化してくれるレンズ」(高橋宣之)
「空気感をねらった写真が撮れる」(藤井智弘)
「イメージを超えてくるレンズ」(藤里一郎)

 さらに「よいレンズ」になくてはならないのが信頼性である。レンズは写ってなんぼ、なのである。

【信頼性に関するコメント】

「軽く丈夫なレンズ」(尾仲浩二)
「壊れないレンズ」(秦達夫)
「信頼できる」(平間至)
「描写力が第一で手軽で堅ろう性を兼ね備えていること」(水野克比古)
「圧倒的な解像力と耐久性」(山本純一)
「信頼」(鷲尾倫夫)

 こうした回答が寄せられるなか、128人中、最多の19人が挙げ、風景、鉄道、野生動物、飛行機、スポーツなど、幅広い撮影分野で上位の人気を誇ったレンズがあった。ある意味「神レンズ」と呼べるかもしれない、そのレンズとは?(構成・米倉昭仁/編集部)

※文中敬称略

※『アサヒカメラ』2020年1月号から抜粋。誌面では128人の写真家が評価し愛用するレンズを、各撮影ジャンルごとに詳しく解説、紹介している。