同じ列車で長い時間ヒザをつき合わせていると、言葉は通じなくとも自然とコミュニケーションが生まれるもの。小さな赤ちゃんを連れた若いご夫婦にお願いして、家族の様子を撮らせてもらった(写真/米屋こうじ)
同じ列車で長い時間ヒザをつき合わせていると、言葉は通じなくとも自然とコミュニケーションが生まれるもの。小さな赤ちゃんを連れた若いご夫婦にお願いして、家族の様子を撮らせてもらった(写真/米屋こうじ)

 とは言っても、ミャンマー各地の鉄道路線で、オーディナリークラスの車両はいつも混んでいる。終点まで乗らなくても街から街への移動に利用されており、ボックス席で相席になった人々も乗っては降りてゆく。目の前で変わってゆく人々と触れ合い、写真を撮らせてもらいながらの旅もまた楽しい。列車のなかには食べ物、飲み物などの物売りが頻繁にやってくる。その土地の名物なども持ち込まれる場合もあり、買い物ついでに撮影をお願いすると、多くは笑顔で応えてくれる。ミャンマーの人々はどこか日本人に似て、はにかみ屋も多く、写真に撮られるのを遠慮する人もいるが、カメラを通して素朴な笑顔に出会えるだろう。

 ちなみにミャンマーで子どもや女性が頬に塗っているのは「タナカー」と呼ばれる化粧品の一種で日焼け止めや清涼効果があるという。木材を水でこすったものを顔や手、首筋などに塗り自然に乾燥させる。ただ塗るだけでなく、さまざまな模様を描いておしゃれするのだとか。また、男女問わず、ズボンのかわりに履いているのが、「ロンジー」と呼ばれる伝統的なミャンマーの民族衣装。それらを身につけた人物を画面に入れることで、ミャンマーらしさを表すことができる。

ヤンゴンから列車で約2時間のバゴー。この駅から、ニャウンカシー支線へ乗り入れる1日2往復のローカル列車が発着する。車両はカラーリングもそのままの、もとJR北海道のディーゼルカーだ。北海道の風景をイメージして、タテ位置で空を大きく入れたアングルで撮影した(写真/米屋こうじ)
ヤンゴンから列車で約2時間のバゴー。この駅から、ニャウンカシー支線へ乗り入れる1日2往復のローカル列車が発着する。車両はカラーリングもそのままの、もとJR北海道のディーゼルカーだ。北海道の風景をイメージして、タテ位置で空を大きく入れたアングルで撮影した(写真/米屋こうじ)

◯よねや・こうじ/1968年、山形県生まれ。人間と鉄道の結びつきをテーマに日本と世界の鉄道を撮影。著書に、アジア11カ国を巡り日常の鉄道風景を撮影した写真集『I LOVE TRAIN-アジア・レイル・ライフ-』、日本国内の木造駅舎を撮影した『木造駅舎の旅』など。

※「アサヒカメラ」2月号から抜粋