俳優の高知東生さん
俳優の高知東生さん

 安倍晋三元首相の銃撃死亡事件や新型コロナワクチン、2020年の米大統領選などをめぐる「陰謀論」にハマる人が後を絶たない。俳優の高知東生(たかち・のぼる)さん(58)もその一人だ。「陰謀論を信じ込む危険は誰にでもあると思う」と話す高知さん。なぜ陰謀論を信じ、そこから目が覚めた今、何を思うのか。

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「すごい情報にたどり着いてしまった……この俺だけが」

 2年ほど前のこと。YouTubeで2020年の米大統領選をめぐる動画を眺めていた高知さんは、「選挙で不正があった」との“衝撃の事実”に釘付けになった。陰謀論に片足を突っ込んだ瞬間だった。

■暇があればSNSを見るように

 高知さんは、2016年に覚醒剤取締法違反などの容疑で逮捕された。その後は自身の薬物依存からの回復に取り組むとともに、依存症に関する情報を発信するなど、依存症者を支援する活動を続けてきた。

 そんな高知さんが、どのようにして縁遠いはずだった「陰謀論」と結びついたのか。

 きっかけは、依存症の情報発信のためにSNSやYouTubeを使うようになったことだった。

「この年齢で動画やSNSでの情報発信を始めてみたものの、どんなやり方が良いのかわからない。他の人の動画や投稿を見て、とにかく情報を取り込まないと若い世代についていけないと思ったんです。いつの間にか、暇があればSNSを見るようになっていましたね」と高知さんは振り返る。

 いわゆる「都市伝説」に関する話題やテレビ番組はもともと好きだったが、あくまで娯楽の範疇(はんちゅう)だった。

 父親が暴力団員だったため、物心ついたときから組員たちがそばにいる生活だった。物事には表と裏があることを嫌というほど目の当たりにしてきた。芸能界だって、自身のキャラクターや、ドラマや番組も「作り込む」世界だ。

「裏だらけの世界で生きてきましたから、ウソは見極められると思っていました。色々な人が近づいてくる芸能界で生きてきて、その人のウソを見抜いた成功体験もありましたから」

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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