独身研究家の荒川和久氏(左)と社会活動家の石山アンジュ氏
独身研究家の荒川和久氏(左)と社会活動家の石山アンジュ氏

 岸田首相が掲げた異次元の少子化対策の議論が進んでいる。政府が示したたたき台では、児童手当の拡充や給食費の無償化、多子世帯への住宅支援といったメニューが並ぶが、こうした経済支援だけでは不十分だと言うのが、社会活動家の石山アンジュ氏と、独身研究家の荒川和久氏だ。少子化の日本にいま必要な議論とは何か?【前編】

【写真】ミレニアム世代とともに新しい家族のかたちを提言したのはこの人

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荒川 子育て支援の議論が進んでいますが、少子化について考えるのであれば、子育ての前の段階を考える必要があります。

 そもそも家族のあり方が大きく変わってきました。

石山 そうですね。拡大家族から核家族になり、夫婦共働きで子育てすることも当たり前になっていますね。一人親世帯も増え続けています。

荒川 多様な家族のあり方、人々の生き方を、社会としてどう受け止めるかの議論が今の国会では抜けて落ちていますね。

石山 そうですね。法律や制度では、配偶者控除や、子どもがいる家庭には、税制上の優遇がある一方で、未婚者や事実婚にはない。

 私は事実婚ですが、今の時代、昭和の家族像にあてはまる人ばかりではなくなってきました。実態にもっと目を向けるべきではないでしょうか。

荒川 本来であれば、未婚者がどうして結婚できないのか、個人の問題だけにするのではなく、そこに社会や経済環境の問題はないのかなどについてももっと議論があっていいはずです。

 未婚者からすれば、今の議論は、結婚して子ども産み育てないと優遇しないよ、とも見える。子持ちと独身者の間に無用の分断をつくっているかのようです。

石山 核家族化、共働き、ひとり親世帯が増えた中で、家庭の中だけで子どもを育てるというかつての考え方が通用しない時代になっています。

 今の少子化対策の議論は、お金をつければ子どもも増えるだろうという発想ですが、もっと生活者の目線に立って、拠り所とする価値観も含めて議論していかないと根本的な解決にはつながらないと思います。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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