漁師の男性は、木村容疑者についてこう話した。

「漁港という場所で、来ていたのは顔見知りの地元の人ばかり。見慣れない男がいるなとは、思っていました。しかし、まさかこんなとんでもないことをするとは、ただ驚くばかりです。大きなけがをした人がいなかったようでよかった」

 岸田首相の様子を最前列で見ていた男性は、

「岸田首相が後ろを向いて手を振っていたときに、後ろの聴衆から怒号が聞こえました。投げ込まれた銀の筒は、岸田首相のすぐ近くに落ちたんです。岸田首相が後ろを向いていたのは、数秒で逃げることができなかったはず。そのときを狙ったのかと感じました。それから20秒くらいで爆発したけど、すごい破裂音でした。直撃して爆発したら大惨事ですよ。昨年7月の安部元首相の銃撃事件が頭をよぎりました」

 と爆発のときの様子を語った。

■警察庁幹部の話
 岸田首相が和歌山入りということで、万全の警備計画を策定して警備にあたっていた。不測の事態も当然、想定していたが、爆弾を投げ込むという犯行には正直、驚かされた。事件の一報を聞いたとき、『岸田首相の命は!』と真っ青になった。SPが、投げ込まれた爆発物を見て、爆発までの20秒ほどで岸田首相を車に乗せて逃した。これが明暗をわけたと思う。爆発物を投げられてしまったのは問題だが、SPもすぐに取り押さえ、容疑者に2本目を投げさせなかったことは評価したい。補選後は広島サミット。さらに厳重な警備をするしか防ぐ手立てはない。容疑者は、過去に大きな事件を起こしたり、政治的な背景があったりという話は、今のところ聞いていない。

(AERA dot.編集部 今西憲之)

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