衆院補欠選挙が4月11日に告示される。各党がそれぞれの思惑で擁立している候補者だが、自民党にとって予想外の状況と見られているのが衆院千葉5区という。政治ジャーナリストの安積明子さんにその背景を聞いた。
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4月1日と2日に自民党本部が行った世論調査の結果に、自民党は驚愕(きょうがく)した。23日に投開票される補欠選挙のうち、「自民党が圧倒的に優位」と見られていた衆院千葉5区で立憲民主党が擁立する候補に22対28と6ポイントもリードされていたからだ。
千葉5区は昨年12月、政治資金収支報告書の虚偽記載問題で、薗浦健太郎元首相補佐官が議員辞職した。薗浦氏は2025年12月までの3年間、公民権が停止される。そこで千葉県選出の石井準一参院議員が千葉県議を擁立しようとしたが、「5区は麻生派の議席だ」と志公会が大反対した。
その結果、河野太郎デジタル相が推し入れた元国連職員の英利アルフィヤ氏が自民党の公認候補となったが、ほとんど地元と縁がなかった英利氏はなかなかその名前が浸透せず、調査結果を見て「今回は候補擁立を見送るべきだった」との声すら一部で上がる始末だ。
その背景には自民党千葉県連の特有の事情も関係すると、関係者は打ち明ける。
「石井さんは昨年の参院選で、3期目当選を目指す麻生派の猪口邦子さんに対抗して臼井正一さんを擁立しました。無事に2人は当選したけど、そもそも石井さんと猪口さんは、誰もが知る犬猿の仲だから」
たとえば2017年には新聞社のインタビューで、石井氏は「彼女がやっているのは肩書のための政治」と猪口氏を批判した。昨年の参院選で臼井氏の得票数は65万6952票で、猪口氏よりも6万9143票も多かった。
またその対立は、自民党千葉県連内の対立と重なる。2021年の千葉県知事選でも石井氏は千葉市長だった熊谷俊人氏を支援し、140万9496票を獲得させた。党県連が推薦した元千葉県議の関政幸氏に102万4773票も差を付けたわけだ。