理不尽な言動で周囲を振り回す他人に、心を乱されることはないだろうか。そんな“アホ”との付き合い方を伝授した書籍『頭に来てもアホとは戦うな!』(田村耕太郎 著)が、シリーズ80万部を突破した。新年度が始まり、新たな環境で“アホ”と対峙する機会も増えてくるだろう。我々はどう立ち回るべきなのか。同書の冒頭を抜粋して解説する。

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私がこの本で送りたいメッセージは経営戦略に似ている。「限られた資源を無駄使いするな」ということだ。時間もエネルギーもタイミングも、たった一度の人生を思い切り謳歌するための、限られた財産である。それを「アホと戦う」というマイナスにしかならない使い方で浪費するなと言いたいのだ。

ナイーブ(英語の本来の意味である子供っぽいという意味)で純粋でまっすぐであるがゆえに、アホな連中と無駄に戦ってしまい、心がすり切れてしまった人たちに、前向きな成果を何も生み出さない行為に時間やエネルギーを費やすことをやめてほしいのだ。そして、その限られた時間とエネルギーを一度しかない大切な人生を輝かせることに使ってほしいのだ。

そういう意味で、この本は「非戦の書」である。私が世界最高の非戦の書だと思う『孫子の兵法』が、2500年の時を超え、現代実社会版になったのがこの本だと自負している。その孫子の兵法で一番有名な一節として、「百戦百勝は善の善なるものに非ず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり(百戦百勝といっても最高の優れた戦い方ではない。敵兵と戦わないで屈服させることこそ最高の戦い方である)」というのがある。

私は、この孫子の一節をさらに進化させ「敵と戦わず屈服させるだけでなく、その力を自分の目的を達成させることに利用する」ことをこの本で説いている。『孫子の兵法』が世界中の経営者に今でも愛読されているのは、「限られた資源を無駄使いするな」というメッセージが経営戦略そのものであるからだ。

「アホ」というと、ある程度心当たりがあるだろう。要は、むやみやたらとあなたの足を引っ張る人だ。会議でなぜかあなたの発言だけにいちゃもんをつけたり、チームメイトなのに明らかに敵意を見せつけて協力的な態度をとらなかったり、明らかにこちらの意見のほうが正しいのに、権力を振りかざしてそれをつぶそうとしたり……。

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