25日に行われたフリーで滑る『オペラ座の怪人』では、シーズンを通してミスが多かった最後のコレオリフトを変更している。確実性を重要視して選択し「変えてからは一度も失敗していない」と村元が自信を持って語る、スピンのように見えるコレオリフトだ。

 5分間練習から大きな声援を受けていた村元と高橋が、『オペラ座の怪人』を滑り始める。怪人の仮面をはぎ取る振付から始まり、リフトを連続で決めると大歓声が起こった。二人ならではのドラマティックな雰囲気を漂わせながら、一つひとつエレメンツを滑っていく。

 最後から二つ目の要素であるダイアゴナルステップで、二人はお互いの顔を見て「いけるぞ」と笑っていた。変更したリフトも美しく成功させて演技を終えた二人は、抱き合って涙を流している。

 ミックスゾーンに現れた高橋は、「もう素直に嬉しい」と興奮冷めやらぬ風情だった。

「ミスなく演技をすることができて、最後まで『オペラ座の怪人』の世界観に入り込んで、エネルギーも切れずに。演技の途中ぐらいから「いけるぞ」みたいな感覚で、本当に久々の感覚だったので。しかも今回は自国開催でプレッシャーもすごく大きかったのですが、その中で納得の、満足のいく演技ができたので本当に嬉しく思います」

「僕は最後のコレオリフトでミスをずっと続けてきたので、最後まで緊張がずっと続いてはいたのですが、でも演技に入ってからは本当に『オペラ座の怪人』の世界観に没頭していて。テクニカルをこなしているというよりは『演技をしている』という感覚で最後まで滑ることができたので、これは本当に練習してきた賜物だなと思います」

 フリーダンス直後は喜びにあふれていた高橋だが、26日の一夜明け会見では少し違う心境も語っている。祝杯をあげる中で、目標としていたトップ10入りを果たせなかったことに思い至り「(10位と)あと2点差もないぐらいで11位だったので、それが悔しい」という気持ちが湧いてきたという。

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コロナ禍の中で「ここまでこられたのは本当にすごいこと」