今大会ではここまで不調の侍ジャパン・村上宗隆(写真:CTK Photo/アフロ)
今大会ではここまで不調の侍ジャパン・村上宗隆(写真:CTK Photo/アフロ)

 3大会ぶりのワールド・ベースボール・クラシック(WBC)優勝に向けて、1次ラウンド最大の山場と見られていた韓国戦。3回に3点を先制される苦しい展開となったものの、中盤以降は打線が繋がり、終わってみれば13対4という大差で侍ジャパンが見事勝利をおさめた。

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 最注目の大谷翔平(エンゼルス)はこの日もタイムリーを含む2安打を放って存在感を示したが、攻撃面での貢献が大きかったのはヌートバー(カージナルス)、近藤健介(ソフトバンク)、吉田正尚(レッドソックス)の3人だろう。3点を先制された直後の3回裏には、この3人が揃ってタイムリーを放ち逆転に成功した。

 特にこの回のヌートバーの一打はこれまで苦しんでいたキム・グァンヒョン(KBO・SSG)のボールをこの試合で初めて完璧にとらえたものであり、他の打者に勇気を与えたという意味でも非常に大きなものだった。近藤と吉田はその後の打席でもきっちりと仕事を果たし近藤は3打点、吉田は5打点と得点源として見事な役割を果たしている。大谷に注目が集まる中で、前後を打つ彼らが状態を上げてきたというのは今後の試合に向けて大きな収穫だったと言えそうだ。

 そんな中で気がかりなのが4番を打つ村上宗隆ヤクルト)の状態だ。6番に降格となったオリックスとの強化試合では第1打席で左中間にスリーランを放ち復調したかに思われたが、この試合でもその後の打席では3打席連続三振に倒れるなど沈黙。本大会に入ってからも2試合続けて先発出場した選手の中で唯一ヒットが出ていない。3回には大谷が申告敬遠され、ノーアウト満塁で打席に入る場面もあったが、バットから快音は聞かれずショートへのインフィールドフライに倒れている。

 昨シーズン、55本塁打を放ってから不振に陥った際には厳しい内角攻めに苦しんでいる印象があったが、今大会でのここまでの打席を見ていると基本的には外角を攻められており、ボールをしっかり呼び込めてないような印象を受ける。大谷のパワーにショックを受けていたという報道もあるが、その後ろを任されているということで感じるプレッシャーはかなりのものがあるはずで、ここまでは打撃に微妙な狂いが生じていることは間違いないだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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村上以外にも“心配要素”