■最大の問題は、腎臓への影響

 結晶は関節にたまって痛風発作を起こすだけでなく、血流にのって全身の血管を駆け巡ります。その結果、血管を傷めたり内臓の機能を低下させたりするリスクがあるのです。

「もっとも大きな問題は腎臓の機能低下です。慢性の腎臓病になると、人工透析が必要になり、日常生活に大きな影響が出てしまいます。痛風後に心血管疾患(急性心筋梗塞と脳卒中)のリスクが高くなるという調査結果もあります」(大山医師)

 生活習慣病は「サイレントキラー(静かな殺し屋)」ともいわれます。異変を感じて病院に行ったらすでに時遅し、といったことがあり得るので、健診などで尿酸値が高いと指摘されたら、まず医師の診察を受けるようにしたいですね。尿酸値が8未満であれば、一般的には生活習慣の改善で尿酸値を下げていきます。

【7】尿酸値は基準値(7.0mg/dL)に下げればいい?

 今回取材した医師らによると、そう考えている患者さんは多く、医師のなかにも誤解している人がいるそうです。しかし答えは×で、一度できた結晶は、尿酸値が6.0mg/dL以下にならないと溶けてなくなりません。山王メディカルセンター院長の山中寿医師はこう話します。

「飲酒習慣や食事内容の見直し、標準体重への減量をしても尿酸値が改善しない場合は、薬物治療でコントロールする場合もあります。尿酸が8.0mg/dLを超えると、痛風の発作をすでに経験している人や、高コレステロール血症、高血圧、腎障害などの合併症がある人で薬物治療が検討されます。9.0mg/dLを超えていたら、他に問題がなくても薬物治療です」

7.0mg/dLを超えると、高尿酸血症と診断されます
7.0mg/dLを超えると、高尿酸血症と診断されます

■約6割が治療を途中でドロップアウト

 しかし、高尿酸血症の治療は、ドロップアウト率が非常に高く、医療機関により前後しますが約6割に及ぶといいます。これは生活習慣病全般の平均である4~5割より高率です。自覚症状がないと治療の効果が実感しづらく、続けるモチベーションを維持しにくいのかもしれませんが、尿酸値9.0mg/dL以上を放置すると5年以内に痛風発作が起きると考えられていて、9以下でも8.0mg/以上あれば5年以内に30%が発作になるそうです。山中医師は強く訴えます。

「痛風発作以外にも、慢性腎臓病や急性心筋梗塞、脳卒中などといった、日常生活や命を脅かす病気のリスクも高めるので、尿酸値6.0mg/dL以下を維持していくことが、治療の目標となります」

次のページ
尿酸値が高くなりやすい遺伝的体質がある