一方で、学生時代に感じたことの一つに、「皮膚科は治療法が少ない」という欠点がありました。学生ながらに「なんでもステロイドを塗っておけばいいんでしょう?」と、今思えば傲慢な考えを持っていた時期もあります。実際、多くの皮膚病はアレルギー反応であることが多く、治療の第一選択薬がステロイド外用剤になります。しかし、やみくもにステロイドで治療するのではなく、診断をきちんとつけて、結果としてステロイドで治療するのでは訳が違います。皮膚科の深みを、学生時代の私はわかっていませんでした。
さらに、最近は数多くの新薬が皮膚科領域で開発されており、アトピー性皮膚炎では2018年以降、ほぼ毎年新しい作用機序の新薬が使えるようになっています。皮膚がんの領域でも、オプジーボを始めとした免疫療法が適応となり、治療学の発展が目覚ましいです。薬が増えたことで、皮膚科の治療は複雑になりました。この複雑さは皮膚科医にしてみれば、腕の見せどころ、となります。皮膚科は診断学だけでなく、治療学も魅力的な学問に変化しています。
また、研究の分野でも皮膚科は注目を集めています。皮膚は、病気があったとき検体を取りやすい組織です。内臓と違い、大きな侵襲もなく検査することができます。そうした利便性から、皮膚の中で何が起きているか解析しやすいのです。皮膚科研究の面白さにみせられ、皮膚科を志望する医学生も中にはいます。私も研究をやっているのでわかりますが、新しいことを発見する魅力が基礎研究にはあります。皮膚科は、この魅力を感じやすい診療科だと思います。私は学生時代に基礎研究にどっぷりハマったせいもあって、最終的に研究も臨床もできる皮膚科を選びました。そのときの選択は間違っていなかったと思っています。
診断学、治療学に加えて研究も皮膚科の魅力です。春になれば、新しく皮膚科医を目指す新人が加わります。どの分野に進むにしても、自分の興味のある分野を開拓し、ぜひ、その道のエキスパートになってもらいたいと思います。