※写真はイメージです(gettyimages)
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 大学の工学部の学士課程入試で「女子枠」を設ける動きが広がりつつある。島根大学、富山大学、名古屋大学は2023年度入試から女子枠を設けた。東京工業大学は24年度入試から58人の女子枠を導入し、翌年度にはさらに枠を拡大し、募集人員は計143人になる。この計画が昨年11月に発表されると「男子学生に対する逆差別ではないか」と、大きな反響があった。なぜ、工学部で女子枠が広がりつつあるのか、AERA dot.編集部は四つの国立大学に取材した。

【写真】取材に応じた東京工業大学の益一哉学長

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 まず、女子枠をいち早く、1994年度に設けた名古屋工業大学に聞いた。

 名工大が女子枠を設けた背景について、同大学のホームページには、こう書かれている。

<本学では、産業界からの理工系女性人材育成の要請に基づき、平成6年から機械工学科(現電気・機械工学科)において女子特別選抜を実施しています>

 この「産業界からの要請」とは、いかなるものだったのか?

「率直に言えば、トヨタグループです。自動車の会社ですから、昔から機械系の女子学生への求人がかなりありました」と、名工大の高木繁参事は打ち明ける。

 名工大は高度工学教育課程、電気・機械工学科で15人の女子枠を設けている。選抜方式は学校推薦型(大学入学共通テスト免除)である。

「実は、この制度を始める直前の年、640人在籍(4学年合計)していた機械工学科の学生のうち、女子はたった1人しかいなかった。毎年、トヨタ自動車から女子学生が欲しいと言われていたのですが、これではどうしようもない。それで、一定数の女子学生が在籍するように、制度を変えることにしました」

 誤解のないように記すと、特定企業から大学に要望があったとしても、実際に女子学生がその企業の入社試験を受けるかどうかは、本人次第である。

 名工大は24年度から女子枠を他学科にも拡大する。物理工学科5人、情報工学科5人、社会工学科(環境都市分野)3人で、いずれも学校推薦型選抜(共通テスト免除)である。

 これについて、高木参事は「もともと産業界からの要望はかなりありましたが、理工系女子の人材を増やしていこうという国の方針に沿う、という面もあります」。

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産業界からの女性人材リクエストはずっとあった