日本人の私たちには、日本人スタッフが医師や看護師の通訳をしてくれ最初から最後までアテンドしてくれた(日本人客が激増しているという)。まずは顔写真を撮り(肌の下に隠れたしみが全て浮かび上がる写真……怖かったです)、「顔が左右対称じゃない」「皮膚がたるんでる」「ほうれいせんが深い」「毛穴が開いてる」「毛穴にダニがいる」と様々な角度から脅され(メンタルの強さが問われます)、あなたにピッタリのコースはこれ!と私が提案されたのは、なんと450万ウォン(約45万円強)もする施術だった。ひーっ!というか、ちょっと待て……そこまでしなくちゃ、私はキレイにならないのか……!と衝撃と絶望に打ちひしがれるしかなく、カウンセリングの段階で帰国したくなってしまったのだった。

 それにしても、みんな、美容にどれほどお金をかけているのだろう。45万円強のコースをいきなり提示され「じゃ、それで」と言える人って、どれくらいいるのだろう。いったいなぜ45万円強も払って、毛穴を小さくしなければならないのだろう。というか、本当にそのダニは私の毛穴に生息しているのか? 美容業界が女たちに「顔にダニがいる!」と脅し、「お前はそのままじゃダメだ」とダメ出しし、金を出させ、結局儲かるのは男の経営者と男の医師たち(ほんと、どこもトップは男性ばかりです)……という業界(ですよね?)だということは頭でわかっているのに、なぜ私はここにいるのか。

 ……という今さらの疑問などが頭に浮かびながらも、もう、いったん入り口に立ってしまえば、そこはもうベルトコンベヤー式のシステムなのであった。45万円強のコースは諦めたものの、せっかく来たのだからと選んだ「たるみ引き締め+肌のケア」コースを、半ば思考停止気味で選んだ私はあれよあれよという間に看護師や医師に囲まれ、バッシンバッシンバッシンと日本では多分出さないレベルの高い出力のレーザーをがんがんあてられる……という時間を過ごしたのだった。

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スケキヨさんはフツーの風景